老舗企業の伝統と革新の歴史が教えるもの 横澤利昌(ハリウッド大学院大学特任教授)

100年以上の歴史を刻んだ老舗は日本全国で約5万社、200年以上でも約4,000社に及ぶという。これら老舗が今日まで命脈を保ち続けた要因は何なのだろうか。経営学者として30年間、老舗や日本の源流に取り組み、令和になって古代文字を研究、そこに日本人の魂を覚醒させるヒントがあると主張する横澤利昌氏にお聞きした。

長期的な視点で時代の流れを読み、本業とのバランスを考えながら、ここ一番と思うことから身の丈に合った改革を続ける。

それもまた老舗の大きな特徴だと思います

横澤利昌
ハリウッド大学院大学特任教授

100年以上続く老舗に共通する特徴の一つは、そのアイデンティティにあります。調べてみると、老舗の55%が創業時の経営理念(家訓、家憲、社訓、社是)を今日まで変えていません。一部を変更したと回答した32%の老舗を含めると、実に87%に上ります。暖簾(屋号、ブランド名)について見ても、53%の老舗がほとんど変えていませんでした。

一方、事業内容、商品・サービス、販売エリア、仕入れ先、顧客などの点では7割の企業が何らかの変更を行っており、ほとんど変えていない企業は20%未満であることが分かりました。

この調査を通して、私が驚いたのは、まさにこれらの点でした。つまり、理念やブランドをどこまでも継承し続ける。と同時に時代に応じて技術、マーケティングを柔軟に革新し続ける。この伝統と革新のバランスこそが老舗の老舗たる所以なのです。

~本記事の内容~(全4ページ)
◇100年以上の老舗企業は日本で約5万社
◇老舗企業が老舗企業たる理由
◇永続する組織と衰退する組織の差
◇老舗が教える事業承継のあり方
◇老舗の源流にあるヤマト縄文の思想
◇ここ一番と思うことから身の丈に合った改革を

プロフィール

横澤利昌

よこざわ・としまさ――昭和16年岩手県盛岡市生まれ・早稲田大学商業研究科修了。60年亜細亜大学教授・名誉教授。現在、ハリウッド大学院大学特任教授、事業承継学会代表理事。平成元年9月から1年間ブリティッシュ・コロンビア大学客員教授を務める。亜大に「ホスピタリティ」を日本初導入。経産省・文科省・厚労省の委員歴任。日本学術会議連絡委員を2期務める。編著書に『老舗企業の研究』(生産性出版)など。


編集後記

「永続する企業には伝統と革新のバランスという共通点がある」。そう語るのは老舗研究の第一人者でハリウッド大学院大学特任教授の横澤利昌さん。様々な危機を乗り越えてきた老舗の歴史を辿る中で、本来あるべき企業経営の本質が見えてきます。

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