醇道一途 日本酒づくりの王道を歩み続ける 澄川宜史(澄川酒造場第四代目蔵元杜氏)

数々の日本酒の品評会で栄誉ある賞を受賞し、国内外で高い評価を受けている「東洋美人」。その銘酒を醸す山口県萩市の澄川酒造場・第四代目蔵元杜氏の澄川宜史氏に、超えてきた人生の山坂、事業永続の要諦、師に学んだ人々に感動を呼び起こす日本酒づくりの極意を語っていただいた。
【写真=師匠である高木酒造・15代目髙木辰五郎氏(右)のもとで修業する若き澄川氏(左)】

これからも地元の方々にもっと愛され、誇りに思ってもらえる日本酒を目指していきたいですし、現場を決して離れず、醇道一途、自分が美味しいと思う王道の日本酒をとことん追求していきたい。

それがいまの私の心からの願いです

澄川宜史
澄川酒造場第四代目蔵元杜氏

――澄川さんが第四代目蔵元杜氏を務める澄川酒造場(山口県萩市)は、2025年で創業104年を迎えるそうですね。まず創業のいきさつをお話しいただけますか。

〈澄川〉 
澄川家は、もともとここ萩市小川の地で米問屋をしていたのですが、親戚筋の営む酒蔵がうまくいかなくなって曾祖父の代に経営を引き継いだんです、それが104年前の1921年、澄川酒造場の始まりだと聞いています。

以来、曾祖父、祖父、父、私と四代にわたって続いてきたわけですけれども、それはやっぱり商売を繁盛させよう、もっと儲けようではなく、地方の酒蔵として「代を繋ぐ」ことを一番の使命に、堅実な経営、地道な酒づくりに取り組んできたからだと思います。

――目先の利益ではなく、代を繋ぐことを大事にしてこられた。

〈澄川〉
特に父の代には、日本酒は斜陽産業だと言われ、地方の酒蔵の廃業が相次ぐ厳しい時代でした。でも、父は何か奇を衒(てら)ったことをするのではなく、地元の方々が日常生活の中で楽しむ、いわゆる普通酒を届けるという地方の蔵元のあるべき姿を守り、身の丈に合う範囲内で地道な商売、酒づくりを貫いていました。

もちろんよりよい品質を求めて原料のお米を山田錦に変えたり、販路を県外に求めたりもしましたが、それも積極的に攻めるというより、あくまで酒蔵を守る、代を繋ぐために変えるという印象でした。その使命は私の代になっても変わりません。

~本記事の内容~
◇王道の酒造りを愚直に追求する
◇よき師との出会いが人生を導いてくれた
◇物語を語る日本酒よりも、物語が語られる日本酒を
◇どん底の中にこそ発展への道がある

本記事では澄川さんに、日本酒づくりを通じて掴んだ王道を歩み続ける大切さ、逆境困難を福に転じていく極意を語っていただきました。

プロフィール

澄川宜史

すみかわ・たかふみ――昭和47年山口県生まれ。東京農業大学醸造科学科在学中に、山形県の老舗酒蔵・高木酒造の十五代目当主・髙木辰五郎氏に弟子入り。大学卒業後、家業の澄川酒造場に入る。平成16年に第四代目蔵元杜氏に就任。奇を衒わない〝王道の日本酒〟を追求し、澄川酒造場の代表酒「東洋美人」は数々の品評会で賞を受賞し、国内外で高く評価されている。


編集後記

自然豊かな山口県萩市小川の地で王道の日本酒づくりを追及する澄川酒造場。その精魂込めてつくられた銘酒「東洋美人」は国内のみならず世界からも高い評価を得ています。その日本酒づくりへの姿勢に大きな感銘を受けました。「日本酒にはつくりての生き様が表れる」と語る澄川酒造場四代目蔵元杜氏澄川さんのお話から、なぜ「東洋美人」は多くの人に評価され、愛され続けるのか、ものづくりの極意、人生・経営発展の要諦がぎっしり詰まったインタビューです。

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