9 月号ピックアップ記事 /インタビュー
不可能が新たな可能性を生む 穴澤雄介 (ヴァイオリン奏者)

全盲のヴァイオリン奏者・穴澤雄介氏は、心臓と両目に障碍を抱えて生まれた。闘病や家庭崩壊、極貧生活などその歩みは壮絶そのものである。しかし、穴澤氏は次々と襲いかかる苦難の中で知恵を生み出し、音楽家としての人生を明るく切り拓いていった。活動を通して多くの人に感動と勇気を与え続ける氏に、今日までの歩みを振り返っていただいた。

人生はどん底がいつまでも続くわけではありません。1年後、2年後、同じ辛さではない。少なくとも私はそうでした。私が一番に伝えたいのはそのことです。
私たちは周りと同じようにできない自分、劣っていたり満たされない自分にどうしてもフォーカスしてしまいがちですが、その中でもできることは実はたくさんある
穴澤雄介
ヴァイオリン奏者
──穴澤さんはヴァイオリニストとしてだけでなく、作曲や講演、ラジオのパーソナリティーなど幅広く活躍されていますね。
〈穴澤〉
ライブ活動や講演活動はコロナ禍の影響で一時は随分減りましたけれども、去年くらいから徐々に増えてきました。ありがたいことに本を出版し、私のドキュメンタリー映画(本、映画共にメインタイトルは『光をみつける』)も公開されましたので、その相乗効果でさらに活動が増えたらいいなと思っているところです。
日常的にやっているのは作曲、編曲の仕事ですね。他にも仕事とはまだ言えませんが毎日YouTubeでいろいろな動画をあげています。それから趣味でマラソンを続けていて、11月にはフルマラソンに出場することを決めているんです。
──フルマラソンですか。
〈穴澤〉
ええ。全盲で心臓病の私がフルマラソンに挑戦すると話すと皆さん驚かれますが、実はこれまで二度フルマラソンを完走しているんです。もちろん、いきなり完走は難しいので、自宅でのルームランナーを使った訓練から始めて少しずつ体を慣らしていきます。昨年、富山マラソンで伴走してくださったチームの方から「また一緒に走ってもらえませんか」と声を掛けていただいたのが嬉しくて、今秋、再び走ることにしました。
プロフィール
穴澤雄介
あなざわ・ゆうすけ――昭和50年千葉県生まれ。心臓と目に障碍をもって生まれ、高校時代にほぼ視力を失う。筑波大学附属盲学校高等部本科音楽科、同専攻科音楽科卒業。ライブ活動の他、学校関係を中心に講演活動を行う。作曲・編曲家、テレビでのコメンテーター、ラジオのパーソナリティーなど幅広い分野で活動中。著書に『光をみつける~全盲ヴァイオリニストからのメッセージ』(ぱるす出版)。ドキュメンタリー映画『光をみつける』が現在、各地で上映されている。
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