4 月号ピックアップ記事 /対談
人生の苦難が教えてくれたこと 鈴木中人(NPO法人いのちをバトンタッチする会代表) 腰塚勇人(『命の授業』講演家)
「人生の四季」には、春夏秋冬の時が移り変わる四季、そして喜怒哀楽を経験する中で深まりゆく心の四季がある――。愛する娘の死、首の骨を折る大怪我……様々な人生の四季、悲嘆の時を乗り越え、講演活動を通じて命の大切さ、尊さを多くの人々、子供たちに語り続けているのが鈴木中人氏と腰塚勇人氏である。命の大切さを伝えるという使命に生きるお二人に、一度きりの人生を悔いなく生きる要諦、心の持ち方を語り合っていただいた。
幸せは誰かがプレゼントしてくれるものでもないし、お店に売っているものでもありません。
どう生きるかを自問自答してこそ実感できるものです
鈴木中人
NPO法人 いのちをバトンタッチする会代表
〈鈴木〉
腰塚さんと初めてお会いしたのは10年ほど前、東京で行われた鍵山秀三郎先生の「日本を美しくする会」の総会でした。そこで名刺交換をさせていただいて……。
〈腰塚〉
ええ、そうでした。次にお会いしたのは、コロナ前に静岡の伊東で行われた総会でしたよね。懇親会のテーブルが同じになってお話しさせていただきました。
〈鈴木〉
ですから、お互いに「命(いのち)」をテーマにした講演活動に長く携わっていながら、こうして二人きりでお話しをするのは実は初めてのことなんですよね。
でも、講演で各地の学校を回りますと、腰塚さんが書かれた色紙が必ずと言っていいほど校長室などに飾ってあり、いつもお会いしている感覚があるんです。
〈腰塚〉
私も同じですよ。最近も宮崎の小学校に講演に伺ったら、そこの校長先生が鈴木さんの大ファンで、「何回も来ていただいています」とおっしゃっていました。
その校長先生に、「今度、鈴木さんと対談するんですよ」って伝えたらすごく喜ばれていました。
『私は』を主語にして、自分の気持ちをもっと大事にすれば、もっと幸せに生きていけます。
自分の人生の主人公は自分なのですから
腰塚勇人
『命の授業』講演家
〈鈴木〉
しかし、こうして腰塚さんのお姿を拝見すると、ご自身の体の調子もある中で、命をテーマにした講演をずっと続けてこられたことに心から感服します。
というのは、やっぱり、命って愚直なテーマです。こうすれば儲かります、綺麗になりますというような人目を惹く内容ではないですから、続けていくのがすごく難しい。
〈腰塚〉
私がここまで講演活動を続けてくることができた大きな理由、原点は、やっぱり、もともと教師だったということと、2002年36歳の時に首の骨を折る大怪我をして、命と向き合った実体験があるからですね。
大人もそうですけれども、いま子供たちのいじめや自殺、鬱病が全然減っていかないという現実がある中で、怪我の経験の話ですが、一人でも子供の命を助けることができたら……。
それは鈴木さんも同じだと思います。
プロフィール
鈴木中人
すずき・なかと――昭和32年愛知県生まれ。56年デンソー入社。平成4年長女の小児がん発病を機に、小児がんの支援活動、「いのちの授業」等に取り組む。17年会社を早期退職し「いのちをバトンタッチする会」を設立。1000校を超える学校を訪問、講演や企業研修には30万人が参加。小学校道徳の教科書にもなる。著書に『子どものための「いのちの授業」~小児がんの亡き娘が教えてくれたこと』(致知出版社)、共著に『「いのちの授業」をつくる』(さくら社)などがある。
腰塚勇人
こしづか・はやと――昭和40年神奈川県生まれ。大学卒業後、中学校の体育教師となる。平成14年スキーの転倒事故で首から下が全く動かなくなる重傷を負うが、多く方の支えのもと、心のあり方を転換し、奇跡的な社会復帰を果たす。その後、教職を辞し、自らの体験をもとに講演家として「命の授業」を展開。開始から12年で命の授業の回数は2100回を超え、聴講した人は80万人を超える。著書に『命の授業』(ダイヤモンド社)『気もちの授業』(青春出版社)などがある。
編集後記
人生の艱難辛苦から立ち上がり、講演を通じて命の大切さを訴え続けている鈴木中人さんと腰塚勇人さん。涙なしには読めない過酷な実体験からお二人が掴んだ心の持ち方や人生の法則は、いま苦難に直面している人、日々を真剣に生きるすべての人の心の糧になるでしょう。
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