4 月号ピックアップ記事 /インタビュー
不遇の時代の過ごし方がその後の人生を決める ~福岡第一高校バスケ部を強豪校へと育て上げた監督の流儀~ 井手口 孝(福岡第一高等学校男子バスケットボール部監督)
高校男子バスケ界で9度の日本一に輝く福岡第一高校バスケットボール部。この強豪を29年前に創部したのが現在も監督を続ける井手口 孝氏である。創部までの歩み、その後の全国制覇までの軌跡は決して一路順風ではなかったというが、いかにして苦境を乗り越え道を切りひらいてきたのか。氏の苦節の日々から学ぶべきものとは――。
人生の勝負は最後まで分かりません。いまの勝ち負けはあくまでいまの結果であって、未来もその結果とは限りません。
将来よき芽吹きの春を、勢いよく伸びる夏を、実りの秋を迎えるためには、自分を信じていま努力し続けるしかないのでしょう
井手口 孝
福岡第一高等学校男子バスケットボール部監督
――昨夏のインターハイ優勝、冬のウインターカップ準優勝、誠におめでとうございます。
〈井手口〉
ありがとうございます。上位にランクインできたといっても、うちはまだまだなんですね。昨年末のウインターカップの決勝はインターハイで勝った相手だったにも拘らず、相手の勢いに完全に呑まれて敗北を喫してしまいました。
今年度は初戦の負け以外、トップリーグまで無敗を続けていたため、僕も選手たちもどこか油断があったのでしょう。技術面で実力差を痛感するなど、練習不足を感じる点が多々ありました。
3年生が引退して新チームになったいま、ゼロからチームをつくり上げるべく、ゲン担ぎの意味も込めて年始は1月1日の11時11分から練習を開始しました。
――ナンバー1、王座奪還へ向けての意気込みを感じます。井手口さんご自身もバスケットボール経験者だそうですね。
〈井手口〉
ええ。小学校5年生の時にクラブ活動の一環として始め、大学まで続けましたが、僕自身はあまり強い選手ではありませんでした。逆に、中学時代によい先生に巡り合えたことで、早々に将来は体育教員になりたい、バスケ部の監督に就きたいと夢を描くことができたんです。
僕らの時代はまだ手を上げて指導するのが当たり前だった中、中学のバスケ部顧問の原田耕吉先生は一切手を上げず、無理な練習を強要せず僕たちを指導してくれました。また、担任だった体育の高野栄一先生も大変な熱血漢で、卒業式には大泣きして送り出してくれる人情味溢れた先生でした。このお二人に憧れ、教師を目指したのです。
将来、監督になったらチームを日本一に導くと決めていたので、日本体育大学に進学してからは、教員免許を取る傍らバスケ指導にも携わることになりました。
プロフィール
井手口 孝
いでぐち・たかし―昭和38年福岡県生まれ。西南学院高校から日本体育大学へ進学。大学時代からバスケットボールのコーチを務め、大学卒業後は地元・福岡県の中村学園女子高校に赴任。平成6年福岡第一高校に就任し、男子バスケットボール部を創部。創部5年目にインターハイ初出場。16年インターハイ優勝。過去インターハイ優勝5回(平成16年、21年、28年、令和元年、4年)、ウインターカップ優勝4回(平成17年、28年、30年、令和元年)。著書に『走らんか!福岡第一高校・男子バスケットボール部の流儀』(竹書房)がある。
編集後記
「私たちはまだまだ無印ですから」。9度の全国制覇を成し遂げてなお謙虚な姿勢で学び続ける井手口さんのお人柄から、名将とは何たるかをまざまざと感じた90分でした。不遇の時期にどう過ごすかが大事—長い冬の時代を過ごした井手口さんの足跡には、人生の要諦が詰まっています。
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