11 月号ピックアップ記事 /インタビュー
命を使い切って生きる——1,200人の子供たちから教わったこと 棚原安子(山田西リトルウルフ指導者)
大阪・吹田の地で少年野球指導を続けて50年。〝おばちゃん〟の愛称で親しまれる棚原安子さんは5人の子育ての傍ら、これまで1,200人の指導に携わってきた。82歳を迎えた現在も自らグラウンドに立ち続けている。「社会で生きていく力を身につける」──運鈍根をベースとした教育を貫いてきた棚原さんに、子育てに懸ける想いを伺った。
たとえ野球の天才であっても、努力なしでは何も成し得ません。葉っぱ1枚の努力、その積み重ねが大きく成長する根源になる
棚原安子
山田西リトルウルフ指導者
能力の如何にかかわらず野球が好きであること、やるべきことをきちっとさぼらずにやっていく子は成長していきます。「運」は、その人の努力があって初めてついてくるものですからね。たとえ野球の天才であっても、努力なしでは何も成し得ません。葉っぱ1枚の努力、その積み重ねが大きく成長する根源になるのです。それから、忍耐、継続する力、正しい考え方をベースにした根性があることも欠かせません。
私はよく若い方に「あなたは、自分の体をどのように使おうと思っているんですか?」と聞くんです。だって、せっかく五体満足で、健康に生まれてきたこの体を、最後まで命いっぱい使い切らないともったいないじゃないですか。
私はこれまでの人生で「しんどい」という言葉を口にしたことがありません。体を動かすのは心だと思っているからです。私の年齢を知った人が「それはできないでしょう」「大変でしょう」と言われることがよくありますが、人間は無理と思ったら無理、やれると思ったらやれる。いつだって心が先で、体は後なんですよ。
82歳にもなると、この先どうなるかなんて分かりませんが、これからも体が動く限り子供のために尽くしていきたいですし、まだまだ子供たちと共に野球を楽しむ「おばちゃん」として、精いっぱい生きていきたいと思っています。他には何も要りません。それが私にとって最大の幸せなのです。
プロフィール
棚原安子
たなはら・やすこ―昭和15年大阪府生まれ。実業団でソフトボール選手として活躍した後、47年に吹田市で夫と共に少年野球チーム「山田西リトルウルフ」を立ち上げる。以来50年間、1200人以上の子供たちの指導に携わってきた。4男1女の母。著書に『親がやったら、あかん!』(集英社)がある。
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