6 月号ピックアップ記事 /インタビュー
先人たちの生き方を語り継ぐ 山﨑健作(遠友再興塾代表)
札幌市在住の山﨑健作さんは、94歳の現在も自身の戦争体験や平和の尊さを若い世代に伝えている。幼き日、キリスト者・新渡戸稲造が創設した遠友夜学校で人生の基礎を育んだと語る山﨑さんは、戦争や平和をどのように捉えて後世に伝えてこられたのだろうか。
「山﨑、命令が出たぞ」。その時の心臓を冷たい手で握られるような感覚はいまもはっきりと覚えています
山﨑健作
遠友再興塾代表
〈山﨑〉
参謀の話が終わると班長が「おまえたちの中で特攻に志願する者は手を挙げろ」と呼び掛けたんです。
私は空中戦闘訓練がまだまだ未熟であり、操縦技術を高めるほうが先だと思いましたから、手を挙げなかったのですが、残りの全員が手を挙げている。命が惜しいと思われるのが嫌で、何秒か遅れて挙手しました。
1週間後、特攻要員として真っ先に名が挙がり、翌日からすぐに爆弾を積んで敵艦に突っ込むための訓練が始まりました。この時の心境は平静ではないですよ。ぶつかれば死ぬんだから。
昭和20(1945)年2月、戦友が勢いよく部屋に飛び込んできて「山﨑、命令が出たぞ」と叫びました。その時の心臓を冷たい手で握られるような感覚はいまもはっきりと覚えています。
――心臓を冷たい手で握られるような感覚、ですか。
〈山﨑〉
戦後、その話を聞いた『北海道新聞』の記者が「恐怖を感じた」と書いていました。しかし、そうではありません。
「命中できるか」「任務が遂行できるか」という緊張感から出た言葉であって、私たちは死ぬことは当たり前だと思っていたんです。だから、皆とても朗(ほが)らかでしたよ。
〈写真は独立飛行第49中隊時代の山﨑さん〉
プロフィール
山﨑健作
やまざき・けんさく――昭和2年北海道生まれ。15歳で陸軍少年飛行兵となり特攻要員として台湾で終戦を迎える。戦後は家業の鋸の電気溶接の職人、その後サラリーマンとして働く傍ら、「青空こども会」などのボランティア活動に従事。94歳の現在も遠友夜学校を顕彰すると共に戦争の語り部としても活動。
特集
ピックアップ記事
-
インタビュー
経営の要諦は創業精神の伝承にあり
加藤好文(京阪ホールディングス会長)
-
対談
子々孫々に遺しておきたい日本の心
山本行恭(椿大神社宮司)
池田雅之(早稲田大学名誉教授)
-
エッセイ
『孝経』が教える生き方
竹内弘行(中国思想史家)
-
エッセイ
人は皆、限られた命を生きる
宮本祖豊(比叡山延暦寺観明院住職)
-
インタビュー
先人たちの生き方を語り継ぐ
山﨑健作(遠友再興塾代表)
-
インタビュー
420年の思いを伝承して生きる
沈 壽官(十五代)
-
インタビュー
「三方よし」の精神を現代に生かし、 皆が幸せになる世の中を実現する
山本昌仁(たねやグループCEO)
-
対談
青少年に人間学をどう伝承するか ~日本一の秘訣は〝木鶏会〟にあり~
堀井哲也(慶應義塾体育会野球部監督)
田中辰治(星稜高等学校野球部監督)
-
対談
未来の世代に伝えたいこと
鈴木秀子(文学博士)
田坂広志(多摩大学大学院名誉教授)
好評連載
ピックアップ連載
バックナンバーについて
バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます
過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。
定期購読のお申込み
『致知』は書店ではお求めになれません。
電話でのお申込み
03-3796-2111 (代表)
受付時間 : 9:00~17:30(平日)
お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード