子々孫々に遺しておきたい日本の心 山本行恭(椿大神社宮司) 池田雅之(早稲田大学名誉教授)

伊勢国一の宮で、猿田彦大神を祀る全国2,000余社の大本宮として、創建2025年の歴史を刻んできた椿大神社(つばきおおかみやしろ)。
主神・猿田彦大神とその妻神・天之鈿女命(あめのうずめのみこと)にまつわる神話には、現代社会が抱える困難を乗り越え、道を切りひらいていく要訣が詰まっているという。
椿大神社宮司を務める山本行恭氏と日本神話に造詣の深い池田雅之氏が語り合う、神代から連綿と受け継がれてきた「日本人の心のあり方」「かんながらの道」とは――。

人として踏むべき正しい道や常識にながらえる。
これが〝かんながらの道〟であり、一番大事なのは実践です

山本行恭
椿大神社宮司

 神道のことを「かんながらの道」とも言いますけど、人として踏むべき道や常識にながらえる、これが「かんながらの道」なんです。

 大祓詞に書かれている天津罪・国津罪が絶対にやってはいけない人道に悖る行為の代表格で、そういうものを学んで、心身共に会得し、生活の規範として実践していく。

 よく神道は感じる宗教だと言われるでしょう。確かに感じることは大事です。しかし、実践しないといけません。

 実践することによってやっと蒔まいた種が芽を出す。昔は不言実行が尊いとされてきましたが、もうダメですね。いまはやっぱり有言実行しないと若い人はついてこない。

 日本に素晴らしい叡智が溢れているのに、それを生かし切れていないのはどこに欠点があるかと言えば、実践していないからではないでしょうか。実践が一番大事。神道は正しい道を歩むかんながらの実践だと思っています。

『古事記』『日本書紀』『万葉集』、この3冊を通して日本人がどう生きてきたか、またどう生きていくかを学ぶべきだと思います

池田雅之
早稲田大学名誉教授

 山本宮司とお話ししてきて、「私たちはどこから来たのか。いまどこにいるのか。これからどこへ進んでいくのか」という、過去・現在・未来を示す日本人の心の物語に思いを馳せてきました。

 その中で、やはり日本人の心の原点は『古事記』『日本書紀』の神話にあるなと感じました。

 西洋人は『聖書』や『ギリシャ神話』を必ず読みますけど、日本人はやっぱり『古事記』『日本書紀』、あと日本人の情感や思いを知るには『万葉集』、この3冊を通して日本人がどう生きてきたか、またどう生きていくかを学ぶべきだと思います。

 日本人の心の歴史、素晴らしい物語が神話には描かれているにも拘らず、戦後教育の中で完全に無視され、忘れ去られてきてしまったわけですが、いまこそ日本人の心の物語である神話に立ち戻り、学び、語り継いでいくことが大事です。

 それが日本を深く知ることに繋がっていくと思いますね。

プロフィール

山本行恭

やまもと・ゆきやす――昭和27年大阪府生まれ。50年皇學館大學卒業後、椿大神社出仕。平成14年宮司に。神社本庁参与、國學院大學協議員、皇學館大学協議員、三重県神社庁副庁長、神道講演全国協議会会長などを務める。

池田雅之

いけだ・まさゆき――昭和21年三重県生まれ。早稲田大学文学部英文科卒業。明治大学大学院博士課程修了。専門は比較文学、比較文化論。小泉八雲など数多くの訳書を手掛ける翻訳家。文部科学大臣奨励賞、正力松太郎賞等を受賞。著書に『小泉八雲 日本美と霊性の発見者』(KADOKAWA)、編著に『お伊勢参りと熊野詣』(かまくら春秋社)など多数。


編集後記

今年、皇紀2682年を迎える日本。脈々と息づいてきた日本精神の源流を辿たどるべく、椿大神社宮司の山本行恭さんと早稲田大学名誉教授の池田雅之さんに記紀神話と神道の教えを繙いていただきました。祈り・言霊・挨拶・掃除・感謝・正直・氣、これらをベースに実践を積み重ね人格を磨くことの大事さが伝わってくるでしょう。

2022年5月1日 発行/ 6 月号

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