4 月号ピックアップ記事 /インタビュー
山が険しいほど見える景色は素晴らしい 三澤茂計(中央葡萄酒社長)

2014年、世界最大級のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」で日本固有のブドウで仕込んだ白ワイン「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」が日本のワイナリーで初めての金賞を受賞。三澤茂計氏が家業である中央葡萄酒に入ってから32年目の快挙だった。日本産ワインを世界に知らしめるまでの道のりはまさに山また山の連続。それでも挫けることなく地道な努力を続けてきた根底にあった想いとは——。

山に登る道は確かに苦しいのですが、その分、頂上から見える風景は魅力的です。そして登ればまた山が見える。すると今度はどんな素晴らしい景色が見られるだろうかと、また登りたくなる。
三澤茂計
中央葡萄酒社長
長年、湿度が高く雨が多い日本の気候はワイン用ブドウの栽培には適していないと言われてきました。でも、「甲州」の金賞受賞は、日本の風土に合ったブドウづくりをして、産地の特徴を打ち出すことが大切なのだと教えてくれました。
白ワイン用ブドウ品種シャルドネで仕込んだワインを「シャルドネワイン」と呼ばず「シャルドネ」と呼ぶように、甲州で仕込んだワインも世界標準で「甲州」と呼ばれるようになりたいという夢が私にはあります。同時にワイン文化を日本に定着させたい。その夢を実現するまで、これからも険しい山を登り続ける覚悟です。
プロフィール
三澤茂計
みさわ・しげかず―昭和23年山梨県生まれ。東京工業大学卒業後、大手商社勤務を経て、57年に中央葡萄酒入社。平成14年三澤農場開園。現在、県内に15ヘクタールのドメーヌを管理。令和元年にはブルーグバーグ紙が4,000本のワインからトップ10に「GRACE Blanc de Blancs」を選ぶ。ブルゴーニュ・シュヴァリエ・タスト・ヴァン就任。黄綬褒章、県政功績者表彰、旭日双光章受章。著書に『日本のワインで軌跡を起こす』(醸造家である娘・彩奈さんとの共著/ダイヤモンド社)がある。
編集後記
世界で認められる日本のワインをつくりたい――。長らく、日本のワインは「薄い」「まずい」と世界から酷評を受けてきました。ワインづくりに適さない気候から日本でおいしいワインをつくるのは不可能といわれてきた中、この思い一筋に30年以上の歳月をかけて試行錯誤を繰り返し、世界で認められる日本産のワインをつくり出した三澤さんの歩みから、逆風でも絶対に諦めない人間の強さはどこからくるのかが学び取れます。

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