1 月号ピックアップ記事 /インタビュー
「誠は天の道なり」 ——『中庸』が教えるもの 矢羽野隆男(四天王寺大学人文社会学部教授)
天と人との繋がりを説き明かした儒教経典『中庸』。その古典に一貫して流れる精神がある。「誠」である。『中庸』は誠をどのように説いたのか、時を経てそれは日本人にどのような影響を及ぼしたのか。中国哲学がご専門の四天王寺大学人文社会学部教授・矢羽野隆男氏に解説いただいた。
人の性質は千差万別で、道をうまく歩める人、歩めない人様々ですが、それを正しく歩めるよう古の聖人が状況に応じて細かく指し示してくれている
矢羽野隆男
四天王寺大学人文社会学部教授
天が人や物に賦与する本来の善なる性質を、『中庸』では「性」と述べています。そしてその性に従って踏み行うべきものが「道」。人の性質は千差万別で、道をうまく歩める人、歩めない人様々ですが、それを正しく歩めるよう古の聖人が状況に応じて細かく指し示してくれている。それが「教え」だと説きます。
(中略)
この世に生を亨けた意味は何か、これは私たちにとって大問題ですが、『中庸』は人は誰もが天から性という種を与えられて生きていると考えます。教えによって大切な種を道に適うように育て、可能性を花開かせることが人の生き方と説きます。いわば自己実現の道を指し示した教えでもあるのです。
プロフィール
矢羽野隆男
やはの・たかお――昭和40年生まれ、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程中退。現在、四天王寺大学人文社会学部教授。専攻は中国哲学・日本漢学。著書に『大学・中庸』(角川ソフィア文庫)、共著に『名言で読み解く 中国の思想家』(ミネルヴァ書房)『白川静の世界Ⅰ 文字』(平凡社)など。
編集後記
『中庸』は古来、日本人に親しまれてきた東洋古典の代表的書物です。現代人にはあまり馴染みのない『中庸』の柱となる教えや言葉を四天王寺大学人文社会学部教授の矢羽野隆男氏に解説していただきました。私たち人間一人ひとりには、誰にも天から尊い役割が与えられており、その種を大きく花開かせるのが人生であるという教えは、ともすれば自己否定に陥りがちな私たちに勇気を与えてくれます。
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