9 月号ピックアップ記事 /インタビュー
誰もが生き抜く力を持っている 佐藤久男(蜘蛛の糸 理事長)
1990年代に年間の自殺者が3万人を越え、いまなお2万人以上が自ら命を絶っている「自殺大国」日本。その中で、20年にわたって独自の自殺予防活動に取り組み、地元・秋田県の自殺者を減少に導いてきたのが、NPO法人「蜘蛛の糸」理事長の佐藤久男氏である。これまで7,000人以上の命の声に耳を傾けてきた佐藤氏に、自らも自殺の瀬戸際に追い込まれ、先人の言葉を支えに立ち直った体験を交えながら、共に支え合い、誰もが自分らしく幸せに生きる人生の要諦をお話しいただいた。
「嵐の中でも時間(とき)はたつ」
死んでしまいたいと思うほどの苦しみの真っ只中にいたとしても、どんな嵐、苦難も過ぎ去る時が必ず来る
佐藤久男
蜘蛛の糸 理事長
〈佐藤〉
何よりお伝えしたいのは、人間というのはすごく強い生き物だということです。「自分はだめな人間だから死にたい」と相談に来た人で、本当にだめな人は一人もいませんでした。話を聴いていると、必ずその人だけのストロングポイント、素晴らしいところが見つかるんですよ。そこを取っ掛かりにしていけば、誰もが再び立ち直ることができるんです。
ですから、いま死にたいと悩んでいる人も、生きていることそれ自体が素晴らしいこと。そして、どんな状況でも必ず自分にはよいところがあることと信じ、それを探して磨いていってほしいし、周りが褒めてくれなくても、自分で自分のいいところをどんどん褒めて、希望を持って自分を肯定して生きていってほしいんです。
〔写真提供=NPO法人「蜘蛛の糸」|自殺の兆候がある人を必要な支援に繋げる人材「ゲートキーパー」を養成する講座で話をする佐藤氏〕
プロフィール
佐藤久男
さとう・ひさお――昭和18年秋田県生まれ。44年、県職員を辞して不動産鑑定事務所に勤め、52年に独立。不動産情報センターや福祉・介護用品の専門店、建築事務所などの経営にあたっていたが、倒産により鬱病を発症。鬱病を克服したのち、知人の経営者の自殺を契機に、平成14年NPO法人「蜘蛛の糸」を設立する。倒産に伴う中小企業経営者とその家族の自殺予防活動に取り組み、これまでに7000人以上の相談を受けてきた。著書に『死んではいけない―経営者の自殺防止最前線』(ゆいぽおと)『自殺防止の灯台論』(くまがい)がある。
編集後記
自殺志願者の声に耳を傾けてきた「蜘蛛の糸」理事長の佐藤久男さんのお話から言葉の力の大きさ、命の尊さを教えられます。
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