9 月号ピックアップ記事 /対談
先人の言葉に導かれて生きてきた 境野勝悟(東洋思想家) 安田 登(下掛宝生流ワキ方能楽師)
古来、読み継がれてきた古典の言葉や先人の教えには、時代を超えて人生を潤す不思議な力がある。東洋思想家・境野勝悟氏と能楽師・安田 登氏は、共に少年期に優れた先人の言葉と出合い、人生の基礎を築いてきた。それぞれの歩みを振り返りながら、支えにしてきた教えや心に響く古典の言葉を縦横に語り合っていただいた。
[写真:境野氏が『致知』と大書された扁額の前で]
『枕草子』や『方丈記』、『おくのほそ道』を読むと、変わっていくものの中に味わうべきもの、心を動かすものを発見して生きていけばいいんだという思いに駆られます。またそれを見つける目を養っていかなくてはいけない。それが日本人の風流の生き方です
境野勝悟
東洋思想家
実は僕、80歳くらいまでは「俺も禅や仏教は結構分かった」みたいな自惚れがありました。少しばかりいい気になっていたんです。ところが、いまになったら逆で、極めていないどころか、もう足らないところばかり。そのことが分かってからというもの、また発心してよく勉強するようになりました。そうやって元気に勉強しようと思えるのはすごく幸せなことだし、ある意味、僕も変化できたのではないかと思っています。
師匠が私を褒めなかったのは、師匠が常に進歩していたからだと思います。ご自身も亡くなるまで舞台を続けられましたからね。褒めるというのは、自分がそこに留まっていることです
安田 登
下掛宝生流ワキ方能楽師
弟子入りした当時、私は師匠の指導に納得できず、「自分だったらこうやるのに」と思っていました。しかし、これは思い上がりだと途中で考え直しました。無にならないと師匠の教えが分からないことに初めて気づいたんです。それからは稽古の時は、自分を捨てることを常に心掛けてきました。
プロフィール
境野勝悟
さかいの・かつのり――昭和7年神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、私立栄光学園で18年間教鞭を執る。48年退職。こころの塾「道塾」開設。駒澤大学大学院禅学特殊研究博士課程修了。著書に『日本のこころの教育』『方丈記 徒然草に学ぶ人間学』(共に致知出版社)『芭蕉のことば100選』『超訳法華経』(共に三笠書房)など多数。
安田 登
やすだ・のぼる――昭和31年千葉県生まれ。高校教師時代に能楽と出合い、ワキ方の重鎮・鏑木岑男師の謡に衝撃を受け27歳で入門。現在は、ワキ方の能楽師として国内外を問わず活躍し、能のメソッドを使った作品の創作、演出、出演などを行う。『身体感覚で「論語」を読みなおす。』(新潮文庫)『NHK100分de名著平家物語』(NHK出版)『野の古典』(紀伊國屋書店)など著書多数。
編集後記
私たちは多くの先人たちの言葉に育まれ、導かれながら、いまという時を生きています。東洋思想家の境野勝悟さんと、下掛宝生流ワキ方能楽師の安田登さんは、共に深い古典の学びを通して人間を磨き続けてこられました。禅や能に打ち込むことで先人の教えの神髄を掴み取ったお二人の話は人生の示唆に富んでいます。
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