私の映画人生は言葉と共にあった 戸田奈津子(字幕翻訳者)

戸田奈津子さんは、これまでに約1,500本もの洋画で字幕を担当してきた押しも押されもせぬ字幕翻訳家である。しかし、出世作となった『地獄の黙示録』を手掛けたのは43歳の時。20年間という長い下積み生活の後だった。85歳の現在もなお大作の字幕翻訳に勤しむ戸田さんに、言葉と向き合ってきた人生を振り返っていただいた。

辞めようと思ったことは一度もないですね。他に魅力ある仕事は何も見つからなかったし、自分にはこの道しかないと思っていました

戸田奈津子
字幕翻訳者

 人間、一生のうちでやれることは限られているわけだから、私も捨てるべきものは捨ててきました。この仕事があるから結婚はしませんでしたし、子供もいません。
「You cannot have everything.」
 つまり、すべてを持つことはできない。捨てるべきものは捨てる。そして自分の生き方は自分で決める。その覚悟できょうまで生きてきました。

プロフィール

戸田奈津子

とだ・なつこ――昭和11年東京都生まれ。津田塾大学英文科卒業後、短期間のOL生活を経て、フリーの翻訳や通訳などの仕事をしながら字幕翻訳者を目指す。45年『野性の少年』等の字幕を担当。55年『地獄の黙示録』が出世作となる。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『タイタニック』など今日まで1,500本を超える洋画の字幕を担当。著書に『Keep on Dreaming』(双葉社)『字幕の花園』(集英社)など。


編集後記

洋画の字幕翻訳者として知られる戸田奈津子さんは、85歳の現在もなお大作の翻訳を手掛けられています。1,500本の映画と向き合ってきた人生を振り返りつつ、字幕を取り巻く環境や日本語の変化など複雑な心の内を披瀝いただきました。

2021年8月1日 発行/ 9 月号

特集 言葉は力

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