見えたものがすべてではない。 思い込みを解放して生きる 志村祥瑚(精神科医/マジシャン)

「マジックで人々を〝思い込み〟から解放したい」、そんな志を掲げる志村祥瑚さんは精神科医兼マジシャンとして異色の活動を続けている。2017年からは女子新体操日本代表のメンタルコーチを務め、チームを44年振りの団体総合銀メダルに導いた。自身も鬱になった過去を基に語った、暗闇から光を見出す生き方とは――。

それぞれの人生において意識のフォーカスを変えることで、自らの思い込みに気づいてほしい。それが一灯となり、明るい人生を拓く鍵になる

志村祥瑚
精神科医/マジシャン

 自分の思い込みに気づけるようになると、そこから世界が変わり、実際に精神医学をやっていこうと後押しされる出来事もありました。研修医として精神科を回っていた時、末期がんで緩和病棟に入院されている50代の男性に出逢いました。工場を経営されており、一番脂が乗ってこれからだという時に病に伏せ、がんが骨にまで転移していて半身不随。毎日「死にたい、死にたい」と繰り返していました。
 担当医は忙しく、ナースはどう接したらいいか分からない。そこで研修医で手が空いていた僕が呼ばれました。学生であった自分に何ができるか分からなかったものの、得意だったマジックを患者さんの前でいくつか披露しました。すると、患者さんの表情が明るくなったので、過去や現実は変えられないけれど、いまマジックを楽しめたように、意識を変えれば人生も楽しめるようになるとお伝えしました。意識って、テレビのチャンネルみたいなものなんです。

――チャンネルですか?

志村
 テレビにチャンネルがいくつかあるのと同様、人生にもチャンネルがたくさんあります。にも拘らず、その方は「なんでがんになってしまったのだろうチャンネル」ばかりをずっと見ていたんです。僕は以前「なんで留年しちゃったんだろうチャンネル」を好んで見ていましたが(笑)。
 このお話をしたところ、翌日は廊下にも音が漏れるほどの大音量で動画を見ていて、「これ面白いよ」と話しかけてくれるま でに元気になりました。昨日と現実は変わっていません。それでも、「いま」を楽しめるようになった。この体験が後に、マジックと精神医学を融合したパフォーマンスへと繋がっていくことになりました。

プロフィール

志村祥瑚

しむら・しょうご――平成3年東京都生まれ。幼少期よりマジックを始め、24年20歳の時にラスベガスジュニアマジック世界大会優勝。「思い込み」の研究のために精神医学を専攻し、精神医学とマジックを融合させたオリジナルのメンタルトレーニングライブを確立。慶應義塾大学医学部卒業後、銀座駅前メンタルクリニック院長として診療。その他、カヌースラロームオリンピック日本代表選手、新体操日本代表「フェアリージャパンPOLA」等、トップアスリート、企業経営者などのメンタルコーチを務める。著書に『人生のタネ明かし 成果を出す人に共通する心の秘密』(講談社)など。公式ホームページ:shogoshimura.com


編集後記

精神科医兼マジシャンの志村祥瑚さんのお話から、生きていく中で様々な〝思い込み〟に縛られていることに気づかされます。

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