10 月号ピックアップ記事 /インタビュー
「不可能を可能に」 子どもたちの未来を創る医療 髙橋 義男(小児脳神経外科医/にわとりファミリー理事長)
北海道で〝子どもの魔術師〟と呼ばれる医師がいる。誰もが匙を投げた難病の子どもを救ってきた小児脳神経外科医の髙橋義男氏だ。氏は手術だけでなく、NPOを立ち上げ子どもたちの成長を長期的にサポートしているが、これまで幾度となく壁に直面してきたという。いかにして自身の人生をひらき、子どもたちの未来を創ってきたのか――。その軌跡に迫る。
〝病気を治すだけじゃない。子どもたちを社会に送り出すことが僕にとっての治療だ〟
髙橋 義男
小児脳神経外科医
にわとりファミリー理事長
――髙橋先生がモデルとなったドキュメンタリー漫画『義男の空』を拝読しましたが、単に難病の子どもの手術をするだけで終わりではないのですね。
髙橋
〝病気を治すだけじゃない。子どもたちを社会に送り出すことが僕にとっての治療だ〟っていうのが信条でね。僕のところにやってくる子どもたちは、基本的に治療適応外で手の施しようがない重症の子しかいません。そのため、一度の手術で緊急事態を脱したからそれで終わりって訳にはいかない場合が多いんです。
結局、子どもの治療って基本的には生活そのものだから、障がいのある子どもに生き抜く力(社会適応能力)をつけさせ、自立して生活できるよう長期的に援助することが不可欠。そのため、医師としての仕事の他に「ほっかいどうタンポポ」「にわとりクラブ」などのNPOを立ち上げ、理事長として子どもたちの成長を見守っているわけです。
――一度治療した子どもたちの成長に長期的に関わる外科医は珍しいのではないですか?
髙橋
こんなに深く携わっているのは世界で1人じゃないですかね。結局、自分の生活はなくなるしお金にはなりませんから、そこまでやろうとする医師は少ない。
――いつ頃からこの活動を?
髙橋
小児病院に移った頃に始めているから、36年くらい前です。36年間一緒に続けてくれている子もいて、その時子どもだったのがもう大人。いまや大家族(患者たちの集まり)の中心です。
もともとは、ハンディキャップのある子どもとその家族が集まるための会として始まったんだけど、その後どんどん参加家族が増えて、いまでは学校の先生や医師、近所の方々がボランティア(サポーター)で参加してくれています。
プロフィール
髙橋 義男
たかはし・よしお――昭和24年北海道生まれ。札幌医科大学卒業後、札幌医科大学脳神経外科学講座講師を兼務しながら、北海道立小児総合保健センターに小児脳神経外科医長として長年勤務。平成17年退職後、小児脳神経外科・小児リハビリテーション科の地域展開をするために、とまこまい脳神経外科、岩見沢脳神経外科、大川原脳神経外科病院、別海町立病院小児脳神経外科部長として診療を行っている。自身がモデルとなったドキュメンタリー漫画『義男の空』(エアーダイブ社/全12巻)がある。
編集後記
脳神経外科医、NPO代表として長期的に難病の子供の支援を続ける髙橋義男さん。正義感溢れる言葉に胸が熱くなります。
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