10 月号ピックアップ記事 /対談
人生の本舞台は常に将来に在り 北尾吉孝(SBIホールディングス社長) 太田 純(三井住友フィナンシャルグループ社長)
緊迫する世界情勢、情報技術の劇的な進化に加え、このコロナ禍で経営を巡る環境は一層厳しさを増している。そうした中、日本を代表するメガバンクである三井住友フィナンシャルグループと、金融界に新たな地平を切り開いてきたSBIホールディングスによる包括提携が発表された。両社を率いる太田 純氏と北尾吉孝氏に、この異色の提携に懸ける各々の思いを交え、いかなる状況下でも挑戦を続けるお二人の情熱の源を探った。
自己否定、自己変革、自己進化のプロセスを繰り返すことによって、組織を常に活性化していけると思っています
北尾吉孝
SBIホールディングス社長
幸い今日まで何とか事業を存続させることができましたが、これは『易経』のおかげだと思っているんです。
『易経』では三つの「キ」があるといいます。一つは「幾」で、これは物事が変化する兆し、前兆がどこかにあるはずだと。それからもう一つは、物事を行うタイミングの「期」。そして最後はツボとか勘所の「機」、これを押さえておかないとダメだと。この三つの「キ」をしっかり押さえておくことが大事だと痛切に感じましたね。
私が創業の時から言い続けているのは、常に進化し続ける組織体にしていこうということです。進化し続けるためには、まず自己否定していかなければなりません。成功体験の上で胡座を掻いていたらダメなんだと。成功したらそのことは忘れて、次の挑戦に向けて自己を変革させ、進化を遂げていく。自己否定、自己変革、自己進化のプロセスを繰り返すことによって、組織を常に活性化していけると思っています。
ここで変わらなければ滅んでしまうという強い危機感が私どもにはあります
太田 純
三井住友フィナンシャルグループ社長
私は社長に就任した時から「カラを、破ろう。」というスローガンを掲げてきました。
最初に申し上げた通り、ここで変わらなければ滅んでしまうという強い危機感が私どもにはあります。けれども変わるというのは痛みを伴うことであって、自分から変わるのはなかなか難しい。特に大きな組織は、前例、風習、固定観念が染みついていて、変わることは容易ではありません。こちらがいくら変わろうと言っても、人がいません、予算が足りません、前例がありませんと、できない理由を探して安心してしまう。
そうではなく、どうしたら変われるかを考えようよ、という思いを込めて「カラを、破ろう。」というスローガンを掲げたんです。社員を本気にさせるのが、私の一番の使命だと思っています。
これまで様々な機会を捉えて社員にメッセージを発信し続けてきた甲斐があって、少しずつ手応えを感じています。ここで手綱を緩めることなく、今後を見据えた新しいコーポレートカルチャーを築き上げていかなければなりません。
プロフィール
北尾吉孝
きたお・よしたか―昭和26年兵庫県生まれ。49年慶應義塾大学経済学部卒業。同年野村證券入社。53年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村企業情報取締役、野村證券事業法人三部長など歴任。平成7年孫正義氏の招聘によりソフトバンク入社、常務取締役に就任。現在SBIホールディングス代表取締役社長。著書に『何のために働くのか』『君子を目指せ小人になるな』(共に致知出版社)など多数。
太田 純
おおた・じゅん―昭和33年京都府生まれ。昭和57年京都大学法学部卒業。同年旧住友銀行入行。平成21年三井住友銀行執行役員。27年には新設されたITイノベーション推進部の担当役員として、ベンチャー企業との協業やキャッシュレス決済事業を推進。29年三井住友フィナンシャルグループ取締役兼副社長。31年同グループ社長。
編集後記
経営環境が厳しさを増す中、包括提携を発表したSBIホールディングス社長の北尾吉孝さんと三井住友フィナンシャルグループ社長の太田純さん。従来の金融業の枠を破り、時代を先取りする新しいサービスの創造に果敢に挑むお二人に、この提携に懸ける思いや、経営への飽くなき情熱の源を語り合っていただきました。
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