7 月号ピックアップ記事 /対談
カンボジアの地雷撤去に我が後半生を懸けて 高山良二(認定NPO法人国際地雷処理・地域復興支援の会理事長) 神渡良平(作家)
かつて戦争の舞台となり国土を蹂躙されたカンボジア。戦闘時に埋設された地雷はいまなお約400万~600万個も残存し、現地の人々の命を脅かし続けている。この状況を憂慮し、17年にもわたり現地で地雷撤去活動に邁進してきたのが、元自衛官の高山良二氏である。高山氏をこの活動に駆り立てるものは何か。弊社新刊『いのちの讃歌』で氏の活動を紹介した作家の神渡良平氏とともに、一人の日本人の運命を大きく変えたこの尊い活動について語り合っていただいた。
(神渡)
以前、高山さんはこんなことをおっしゃってましたよね。
自分で自分を守ることのできなかったカンボジアに、他国からいろいろな連中が入ってきてぐちゃぐちゃにしてしまった。そんな国で地雷撤去活動をやっていると、祖国・日本もいま、女性が荒くれ男たちに弄ばれているような状況にあるように思われてならないと。敗戦時の占領政策がそのまま続いていることにも全然気がついておらず、とても危険な状態にあると。
(高山)
日本にずっといたら、恐らく私も日本のいまの現状は見えなかったと思います。ところがカンボジアにいたら、本当にガラス張りのようによく見えるんです。私たちはやっぱり、かつて日本にあった大きな戦争のことをもう一度思い起こさないといかんです。
日本はあの時になくなっていても不思議じゃなかった。それを当時の世界の指導者たちが残すという判断をしたんだけれども、日本と戦ってその優秀さを痛感していた彼らは、様々な足枷をかませました。それがいまいろいろな問題になって浮かび上がっています。
かつて地中海で栄えていたカルタゴはローマに滅ぼされました。私たちもそういう現実にしっかり目を向けなければ、最後はカルタゴみたいに、昔こういう優れた民族がおったそうだと過去形で語られることになってしまいます。そうなってしまったら、二千六百数十年続いてきた日本の先祖に申し訳が立たんですよ。日本民族を残すために何ができるか。危機感を持って真剣に考えなければダメだと思うんです。
プロフィール
高山良二
たかやま・りょうじ―昭和22年生まれ。愛媛県出身。地雷処理専門家。41年陸上自衛隊に入隊。平成4年カンボジアPKOに参加。14年陸上自衛隊を定年退官と同時に日本のNGOの一員としてカンボジアに赴き活動。23年NPO法人国際地雷処理・地域復興支援の会(IMCCD)を設立、タイ国境に隣接するカンボジア北西部で活動。著書に『地雷処理という仕事』(筑摩書房)がある。
神渡良平
かみわたり・りょうへい―昭和23年鹿児島県生まれ。九州大学医学部中退後、新聞記者や雑誌記者を経て独立。38歳の時脳梗塞で倒れリハビリで再起。闘病中に書いた『安岡正篤の世界』(同文舘出版)がベストセラーに。現在では執筆の他、全国で講演活動を展開。著書に『安岡正篤 立命への道』『下坐に生きる』『いのちの讃歌』(いずれも致知出版社)など。
編集後記
弊社より『いのちの讃歌』を上梓した作家の神渡良平さんに、同書に登場する国際地雷処理・地域復興支援の会理事長の高山良二さんとご対談いただきました。いまなお内戦の傷痕に苦しみ続けるカンボジア。定年後の後半生を懸けて、現地の地雷撤去に邁進する高山さんの活動には、同じ日本人として心を奮い立たせられます。
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