12 月号ピックアップ連載/第一線で活躍する女性
あの後悔を二度と繰り返さない 西村京実(ウエスト社長)

分野を問わず、人生を真剣に生き、業界・社会の一隅を照らす女性にフォーカスしている『致知』の人気連載「第一線で活躍する女性」。今号では、老舗靴下メーカー「ウエスト」の西村京実社長にご登場いただきました。
いまや量販店に行けば3足セット1,000円で手に入る靴下。この靴下が、かつては限られた人しかもっていない貴重品だったことは、あまり知られていません。1902年(明治35年)年、東京・早稲田で創業された靴下工場「西村靴下商店」をルーツに持ち、今年124周年を迎えたウエストは、日本の靴下産業を黎明期から支える老舗です。中国産の安い商品の流入に伴い、一度は靴下事業から涙ながらに撤退した同社のブランドが、いま人気を博しています。創業者のひ孫にあたる西村社長は、30歳で家業への入社を果たし、そこからいかなる覚悟で祖業である靴下事業に再び火を灯してきたのでしょうか。

靴下を通して日本人の感性を呼び覚ます。そのために今後も、日本の技術を守り、発信していきたい
西村京実
ウエスト社長
【写真=高級紳士靴下ブランド「idé homme(イデ・オム)」】
──日本の靴下産業を支える老舗を継承し、奮闘する女性社長がおられると伺ってまいりました。
〈西村〉
1902(明治35)年、曽祖父の初代・西村信次郎が東京の早稲田で興した靴下工場「西村商店」がウエストの原点です。靴下が貴重品だった時代に事業を始めて、120年、靴下づくりを続けてきた会社なんです。
工場と合わせて約30名で靴下と不動産を手掛けていますが、歴史を振り返ると、大きかったのは祖父、2代目信次郎の存在です。婿養子で当社に入り、家業を法人化して成長させつつ、日本靴下協会をはじめ3つの業界団体の理事長を歴任しました。
――自社の経営のみならず、業界全体の利、発展を考えられた。
〈西村〉
祖父は地域貢献にも力を注いだ人でした。1964年、岩手県胆沢(いさわ)郡に工場を建てた際は、地元の工員が働きながら教員免許を取れるように通信制の学校も併設しました。そんな祖父に実直さを見込まれ、同じ婿養子に入った父が工場長として奔走し、後に母が社長を継ぎ、2020年から私が社長を務めています。
──御社の靴下がいま、人気を広げているそうですね。
〈西村〉
当社の紳士靴下ブランド、「idé homme(イデ・オム)」は、自社サイト「西村靴下商店」や大手百貨店、全国のセレクトショップでお取り扱いいただいています。
量販店なら3足1,000円で買える時代ですが、当社は1足平均3,000~5,000円。実は初め、販売にとても苦労しました。100年以上靴下をつくっていますからものづくりは得意な半面、売るほうが下手でして。周りから「売るつもりあるの?」と疑われるほどです(笑)。
それでも「足もとの感覚を呼び覚ます靴下」のコンセプト通り、日本の職人の技術と、最高級の素材が評判を呼んで、贈り物に喜ばれる商品になりました。……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
◇高級靴下で支持を広げる〝売る気のない会社〟
◇工場閉鎖という修羅場を潜り抜けて
◇ゼロから見出した祖業復活の糸口
◇日本人の感性を靴下で磨き続ける
プロフィール
西村京実
にしむら・きょうみ――昭和45年東京都生まれ。獨協大学卒業後、コンサルティング会社、IT企業での派遣勤務を経て平成12年30歳で家業のウエストへ入社。営業、企画を担当し、21年靴下販売を担うアイ・コーポレーション社長。令和2年よりウエスト社長。高級紳士靴下ブランド「idé homme(イデ・オム)」をはじめ、最高級素材とメイドインジャパンのものづくりを貫く。
編集後記
取材は東京・早稲田のウエスト本社にて実施しました。会社の扉を開けると、明るく爽やかな雰囲気を感じました。創業者から数えて4代目にあたる西村社長を中心に、いいものをつくっていこうという気風が巻き起こっているのでしょう。記事に収まり切らなかったものの、自社工場を通じた日本の靴下づくり・ビジョンを広く伝える活動、また本社を改装しての新たな発信拠点づくりなどが語られ、人知れず日本人の足元を支えてきた同社と西村社長ならではの未来展望に、こちらもワクワクしました。

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