12 月号ピックアップ記事/エッセイ

世阿弥が目指したもの 観世清和(二十六世観世宗家)

父・観阿弥と共に、現在まで約700年続く能の礎を築いた世阿弥。数々の傑出した能の作品のみならず、「初心忘るべからず」「一座建立」など、世阿弥が残した言葉や教えは、時代や分野を超えて不滅の輝きを放ち、いまを生きる人々を導き続けている。その能700年の歴史と伝統を継承する二十六世観世宗家である観世清和氏に、実体験を交えながら、先祖である世阿弥の実像、世阿弥が生涯を通じて目指したものについて語っていただく。
【写真=大曲『道成寺』を演じる観世氏(提供:観世宗家)】

世阿弥のいう「初心」とは、己の技量の未熟さであり、失敗のことを指します。つまり世阿弥は、自分の未熟の自覚を忘れてそこに安住してしまえば、もはや芸は一歩も上達しなくなると、慢心する心を強く戒めているのです

観世清和
二十六世観世宗家
【写真=『翁』を演じる観世清和氏と後継者である三郎太氏(撮影:駒井壮介/写真提供:観世宗家)】

<観世>
当家は観阿弥、世阿弥親子に始まり、私で二十六代目になります。観阿弥、世阿弥、そして三代目の音阿弥(元重)は、私たち子孫、観世流一門にとって、守り神・氏神といいますか、大所高所から常に光を放っている存在です。
 
能楽堂で能を演じる前、出を待つシテ(能の主役)は、大きな姿見がある「鏡の間」に着座して気持ちを整えます。
 
自分の出が参りますと、やおら能面に向かって、「イタダク」という拝礼をいたします。拝礼は「変身願望、能面に自分の魂を移して変身するためのものだ」と言う人もいらっしゃいますが、私たちにとっては観阿弥、世阿弥、音阿弥に対する「先祖礼拝」なのです。先代の父もそのように言っていました。
 
つまり、「きょうも一日、大過なく無事に演じることができますように、どうぞ見守ってください。いま舞台を勤めることができるのはご先祖様のお陰です」という気持ちを表しているのです。
 
また、当家には観阿弥、世阿弥、音阿弥が実際にかけたであろう能面も伝存し、現在も舞台で使用しています。当然そこには3人の汗が染み込んでいます。従って、数百年前のご先祖様であっても、決して遠い存在ではなく、非常に身近な存在であり、「いまも生きている」という感覚があるのです。……(続きは本誌をご覧ください)
 
~本記事の内容~
◇代々相伝される世阿弥自筆の第六花修
◇ご先祖様はいまも生きている
◇常に学び続けた人 世阿弥の実像
◇世阿弥の生涯は順風満帆ではなかった
◇能の本質は亡者供養である
◇能の役割は、人々に幸せを伝播すること
◇初心忘るべからず―道を究めるために

プロフィール

観世清和

かんぜ・きよかず――二十六世観世宗家。重要無形文化財総合認定保持者。昭和34年生まれ。平成2年宗家継承。観阿弥・世阿弥の子孫として現代の能楽界を代表する演者。国内外の能公演はもとより、(独)日本芸術文化振興会評議員・東京藝術大学客員教授・国立能楽堂養成研修主任講師を務め、伝統芸術の保存と継承・後進の育成にあたる。(一財)観世文庫理事長、(一社)観世会理事長、(一財)日本中国文化交流協会副会長。フランス芸術文化勲章シュバリエ、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、JXTG音楽賞など多数受賞(章)。


編集後記

日本を代表する伝統芸能である能を大成した観阿弥・世阿弥親子。その直系子孫として能700年の歴史を継承するのが二十六代観世宗家の観世清和さんです。取材当日には代々相伝されてきた世界唯一の世阿弥直筆の『風姿花伝』(第六花修)をお見せくださり、あらゆる分野に通じる世阿弥の教え、道を究める極意を繙いていただきました。

特集

好評連載

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

致知とは? 致知とは?一覧