12 月号ピックアップ連載/生涯現役

生命誌が教えてくれたこと 中村桂子(JT生命誌研究館名誉館長)

人間を含めた地球上のあらゆる生命を40億年の歴史やDNAから読み解いていく「生命誌」という新たな知を切り拓いてきた中村桂子さん。どうすれば私たちはよりよい人生、世界を実現していけるのか――。90歳のいまも現役で活躍を続ける中村さんに、自身の歩み、生命誌の学びを交えてお話しいただいた。
【写真=多様な生き物が長い時間の中で誕生した歴史と関係を表現した「生命誌絵巻」(原案:中村桂子/協力:団まりな/画:橋本律子©JT生命誌研究館)】

生物は皆仲間、人間は生き物であり自然の一部である、という当たり前のことを基本に、私たちはどう生きていけばよいのか、考え直すことが必要です

中村桂子
JT生命誌研究館名誉館長

――中村さんは生命誌研究者として、90歳のいまも執筆や講演など現役でご活躍です。
 
<中村> 
私は過去や未来のことよりも、「いま」が大事なんですね。
 
科学分野、生物の研究に携わっているからか、「子供の頃から科学が好きだったのですか?」「昆虫を集めていたのですか?」ってよく聞かれるんですけれども、全くそんなことはありませんでした。
 
毎日おままごとや人形遊びに明け暮れて、大人になるなんて考えたこともなかった。目の前のことに一所懸命取り組む、「いまが楽しい」という姿勢でずっと生きてきたんです。ですから、その姿勢はいまも変わらず、年齢について考えたことはほとんどありません。
 
――いまを楽しく一所懸命に生きる。その積み重ねが、中村さんのいまに繋っているのですね。
 
<中村> 
最近、タイパ(タイムパフォーマンス)、コスパ(コストパフォーマンス)といった言葉が流行っていて、何事も速く効率的にという風潮があります。でも、人間が生きているということは、毎日一つずつ何かに取り組んだり、考えたり、誰かと会話をしたり、時を紡いでいることなんですね。
 
――生きるとは時を紡ぐこと。
 
<中村> 
それをタイパ・コスパで縮めてどうするの? タイパ・コスパを強調する人は、おそらく人間が生きているということをきちんと考えていない、人間を機械のように見ているんです。例えば自動車であれば、効率化でお隣の工場より生産性、利益は上がるかもしれません。でも、一歳の赤ちゃんをタイパ・コスパで育てても、お隣の赤ちゃんよりも早く育つということにはならないでしょう。……(続きは本誌をご覧ください)
 
~本記事の内容~
◇生きていることは、時を紡いでいること
◇皆それぞれ自分の時計を持っている
◇生きる基盤は食べること
◇出逢いに導かれ生命科学の世界へ
◇定年の年齢を前に新しいことに挑戦する

プロフィール

中村桂子

なかむら・けいこ――昭和11年東京生まれ。お茶の水女子大学付属高等学校卒業後、東京大学理学部化学科に入学。同大学院生物化学科修了後、46年三菱化成生命科学研究所入所。早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授を経て、平成5年JT生命誌研究館副館長に就任。14年同館長。令和2年より名誉館長。著書に『生命誌とは何か』(講談社学術文庫)『老いを愛づる―生命誌からのメッセージ 』(中公新書)など多数。


編集後記

90歳を迎えても研究、講演、執筆、庭の手入れなどに取り組む中村桂子さん。生命40億年の歴史と関係をDNAから紐解く「生命誌」の道を切り拓いてきた中村さんのメッセージから、人間が生きるとは何か、戦争をなくすために何ができるか、よりよい未来を築くヒントを学びます。

特集

好評連載

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

致知とは? 致知とは?一覧