12 月号ピックアップ記事/対談
経営の道は前進あるのみ 中村栄輔(モスフードサービス社長)星野正則(ドトールコーヒー社長)

日本人の味覚に寄り添うメニューで成長を遂げてきたモスバーガーと、セルフ式カフェのパイオニアとして不動の地位を築いてきたドトール。それぞれ多くの人々に親しまれてきた人気店を率いる中村栄輔氏(左)と星野正則氏(右)は、共に創業者の薫陶を受け、社会の変化の中でその精神を守りつつ業績を拡大している。各々が経営に懸ける思いを縦横に語り合っていただき、成長を続ける会社の条件を探った。

「一生勉強、一生青春」「熱い心と冷静な頭」を座右の銘にしています。
環境は常に変化していきますから、それを冷静に見極め、学び、成長し続けること。そういう情熱を持ち続けることが大事だと思います
中村栄輔
モスフードサービス社長
〈星野〉
御社がこの大崎(東京都品川区)に本社を移されてから、お邪魔するのはきょうが初めてですが、想像以上に素晴らしいオフィスですね。受付の方に促されてドリンククジを引かせていただいたら、銀賞が当たりました(笑)。
〈中村〉
面白いでしょ(笑)。実はそれ、私のアイデアなんです。試しに1か月やってみたら、お客様の緊張が取れて対話がとても弾むので続けてもらっています。当社はお店でもお客様とのファーストコンタクトを大切にしていますから、受付も温かみのあるものにしたいと考えて試行錯誤を重ねてきました。
ちなみにこのクジは6人に1人の確率で当たるようになっていて、当たりクジの中にも金銀銅があって金や銀はなかなか当たらない。ですから、頻繁にお越しになる方にも楽しんでいただけるんです。
とにかく、目の前の方に喜んでいただきたいと考えて、いろんなことをやっているんです。
〈星野〉
異業種交流会でお目にかかって以来の長いお付き合いですが、その頃から中村さんの遊び心といいますか、人を喜ばせようというサービス精神には感服しています。
〈中村〉
その交流会に参加したのは、当社の創業者が急逝して2年後くらいでしたから、もう27年くらい前になりますね。星野さんとは、それぞれ創業者に仕えてきた共通点もありますから、やっぱりいろいろ通じ合うものがあります。
〈星野〉
御社の創業者である櫻田慧(さとし)さんと、当社創業者の鳥羽(とりば)博道も、随分長いお付き合いでしたしね。
以前鳥羽から「僕は櫻田さんと100万円のコーヒーを飲みに行ったんだよ」という話を聞いたことがあります。櫻田さんがアメリカのホテルでものすごくおいしいコーヒーに出会ったというので、わざわざ飛行機代をはたいて一緒に飲みに行ったんだと(笑)。そういうお付き合いを重ねながら、お互いに切磋琢磨してきたようです。

学び続けない人は、リーダーになるべきではないと私は思います。
まだ足りない、もっとできるのではないかと学び続け、成長し続ける人こそがリーダーであってほしいと私は思いますね
星野正則
ドトールコーヒー社長
〈星野〉
個人的な繋がりばかりでなく、本部と加盟店との関係性においても、御社とは大変近しいものを感じています。
以前、御社の加盟店オーナーさんの集まりであるモスバーガー共栄会の勉強会にお邪魔したことがありますが、お互いに切磋琢磨していいチェーンをつくっていこう、お客様に喜んでいただこうという皆さんの思いがひしひしと伝わってきて、モスバーガーさんが強い理由が分かった気がしました。
中村さんは、「ここまで来るのは大変だったんですよ」とおっしゃっていましたね。
〈中村〉
共栄会は、FCオーナーさんと一緒によいお店をつくるために立ち上げたものですが、創業者亡き後に少し原点を見失いかけた時期がありました。そこで私が営業本部長になった14年くらい前に、共栄会の役員さんたちと1泊2日で合宿をやったんです。
事前に共栄会の存在意義は何かという質問を投げかけたところ、本部にもの申すばかりのいまの共栄会は問題だ。一緒にお客様のほうを向くことが大事だというご意見をいただいて、当日は侃侃諤諤の議論になりましてね。一緒にお客様に喜んでいただくよいお店をつくることが大事であり、そのよいお店の定義は、モスバーガーの基本方針を実践している店だという結論を得て、そこから一気によい方向に流れ始めたんです。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ(約14,000字)~
◇共に創業者に仕えて
◇全店で共有している基本方針
◇お客様は何を期待しているのか
◇ひと手間 ひと配慮
◇立地開発ではなく立地創造
◇株主総会での気づきを元に
◇「一緒にやろう!」と手を差し伸べられて
◇「アントレプレナーシップを持って仕事をしてほしい」
◇ドトールに関わる人を不幸にしてはならない
◇もう一杯飲みたくなるコーヒーを追求する
◇自分から手を挙げて取り組むこと
◇夢を変え、意識を変え、行動を変える
◇タップダンスで示した本気の決意
◇原点を見失うことなく変化、成長を続けていく
プロフィール
中村栄輔
なかむら・えいすけ――昭和33年福岡県生まれ。57年中央大学法学部卒業。63年モスフードサービス入社。法務部長、社長室長、店舗開発本部長を経て、平成17年執行役員営業企画本部長。その後、常務取締役事業統括執行役員などを経て、28年社長に就任。令和8年日本フランチャイズチェーン協会副会長。
星野正則
ほしの・まさのり――昭和34年新潟県生まれ。58年亜細亜大学法学部卒業、ドトールコーヒー入社。平成12年取締役店舗開発本部長。20年ドトール・日レスホールディングス社長に就任。23年ドトールコーヒー会長を兼務。29年同社社長に就任。令和7年日本フランチャイズチェーン協会会長。
編集後記
モスフードサービス社長の中村栄輔さんとドトールコーヒー社長の星野正則さんは、共に社長就任前からの旧知の間柄。闊達な語り合いを通じて、貴重な仕事のヒントを多数いただきました。「アントレプレナーシップを持って仕事をする」「ドトールコーヒーに関わる人を一人として不幸にしてはならない」。各々が守り抜いてきた創業者の訓戒に、両社が変化・成長を続ける所以を知ることができました。

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