12 月号ピックアップ記事/エッセイ

人は自分のためだけに生きるのではない──ろうあ者の一家に生まれた私がいま伝えたいこと 牧山定義(上州ろうあ魂代表)

群馬県前橋市に住む牧山定義さんは祖父、両親、きょうだいすべてが生まれつきのろうあ者という家庭に生まれた。牧山さんご自身もろうあ者である。差別、偏見の激しい時代背景の中、一家は必死に道を切り拓き、牧山さん自身も人間学の学びを糧に長年、ろうあ運動に取り組んできた。これまでの歩みを振り返りながら伝える牧山さんの渾身のメッセージ。
【写真=講演会で、東京大空襲の焼夷弾で吹き飛ばされる場面を演じる牧山さん。母・昌子さんが体験した戦火の恐ろしさを表現している】

様々な苦労は私の中に体験として蓄積され、自分を成長させてくれる大きな力となっています。
数え切れないほど多くのろうあの先人たちから受けた恩は生涯を尽くしてもなお返せるものではありません

牧山定義
上州ろうあ魂代表

私や私の家族が生きてきた環境は、傍目にはいささか特殊な世界として映るかもしれません。私は耳が聞こえず、言葉を発することも叶いません。しかも、それは私だけではありませんでした。祖父も両親もきょうだいすべてがろうあ者として歩んできたのです。
 
それでも戦前、戦中、戦後という、いまでは想像もできないほど厳しい時代を生き抜いた祖父や両親は、聞こえないという困難に屈することなく人としていかに生きるべきかを、その生涯を通して私に教えてくれました。
 
ここでは私や家族の人生を辿たながら、還暦を迎えた私が一人のろうあ者としていま感じる率直な思いを皆様にお伝えできたらと思っています。
 
私が伝えたい一つの大切なメッセージ。それは同じく耳が聞こえなかった母・昌子から聞いた戦争の記憶です。
 
東京大空襲前日の1945年3月9日、母方の祖父・小泉釜太郎と母は、食べ物を分けてもらうために東京・荒川に住む知り合いを訪ねていました。祖父は当時42歳、母は10歳。宿の部屋に突然石が投げ込まれたのは、この日の深夜のことでした。窓ガラスが割れる衝撃と振動で目を覚ました祖父が窓の外を見ると、あちらこちらで火の手が上がり、逃げ惑う多くの人の姿が目に留まりました。祖父は母を叩き起こして、すぐに外に飛び出しました。……(続きは本誌をご覧ください)
 
~本記事の内容~
◇「一人でも生き抜け。前だけを見て走れ」
◇文字を読む力と書く力を磨く
◇世のため人のために尽くしてこそ本当の人間
◇人生を変えた人間学の学び
◇皆で支え合い共生できる社会を目指して
◇「上州ろうあ魂」で人生を生きる

プロフィール

牧山定義

まきやま・さだよし――昭和40年群馬県生まれ。県立聾学校卒業。大手ベアリングメーカーに長年勤務する一方、前橋市を拠点にろうあ者の権利擁護などの運動に携わってきた。現在も上州ろうあ魂代表として講演や演劇活動、新聞「声」欄を通した啓発など幅広い活動に取り組んでいる。


編集後記

上州ろうあ魂代表の牧山定義さんは、祖父・両親・きょうだい全員が生まれつきのろうあ者という環境で育ちました。そんな牧山さんの精神的支柱は『致知』による人間学の学びだといいます。後に続く仲間の幸せのために前進を続ける歩みに、胸を打たれずにはいられません。

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