12 月号ピックアップ記事/対談
山の奥にまた山あり 【一道を歩むは楽しきかな】 稲田 弘(トライアスロン選手)玉田元康(歌手/「ボニージャックス」リーダー)

世界一過酷なトライアスロンと称されるアイアンマン世界選手権の最高齢完走者としてギネス認定され、93歳にして現役トライアスリートである稲田 弘氏(右)。凛々しい歌声と美しいハーモニーで多くの人々を魅了してきたコーラスグループ「ボニージャックス」をリーダーとして率い、90歳でソロデビュー、92歳のいまなお舞台に立ち続ける玉田元康氏(左)。共に90の坂を上りながら、生気溌剌と一つの道を極めるお二人に、山坂を越えてきた歩み、歳を重ねてさらに輝きを増す秘訣を縦横に語り合っていただいた。

歳を重ねて体力は衰えても、まだまだ進化できる
稲田 弘
トライアスロン選手
〈稲田〉
おお、久しぶり。玉田とは早稲田大学時代の同級生で、早稲田大学グリークラブでは共に合唱をしていた仲だけど、しばらく会っていなかったね。
〈玉田〉
数十年前までは時折開いていた同期会なんかも、最近は人が減ってやらなくなっちゃったんでね。でも、稲田は世界中の雑誌でしょっちゅう取り上げられているでしょう? 記事を見ているので、活躍はよく知っています。
〈稲田〉
あっちこっちからインタビューが来ますからね。玉田こそ、かのボニージャックスのリーダー。大スターだから恐れ多いですよ。
〈玉田〉
グリークラブに入った頃のことはよく覚えています。私は最初、稲田を上級生だと思った。何せ私より年齢は2つ上ですから。だけど、お茶目というか、人を笑わせる剽軽(ひょうきん)なところがあって、すぐに意気投合しました。
〈稲田〉
僕らはダサいのが似ていたんですよ。要するに、貧乏でスマートじゃない。下駄を履いて登校していたし、服装は着たきり雀でしょう。ボロボロの服で舞台に立ち、よく二人揃って先輩に怒られてね。戦後の貧しい時代でも、僕らは際立っていたんです。
〈玉田〉
稲田は和歌山から、私は熊本から出てきていましたからね。大学2年か3年の夏休みに帰省する時、稲田の実家にも寄りました。
〈稲田〉
そうそう。玉田が降りる駅を間違えて、僕が迎えに行ったことはいまでも忘れられません(笑)。

好きなことを貫く道を選んだ者は、現状に甘んじてはいけない
玉田元康
歌手/「ボニージャックス」リーダー
〈稲田〉
それから、大学2年の時には「コール東京」のメンバーとして、一緒に横田や厚木の進駐軍キャンプを回りました。
〈玉田〉
コール東京はグリークラブから12名を選抜したコーラスグループです。1ステージ3曲ほど歌ったら、すぐトラックに乗せられて次のキャンプに向かう。1日何ステージもこなして大変でしたが、わりかし評判はよかったよね。
〈稲田〉
ギャラの羽振りもよかったです。人数が多い分、手元に入るお金は少なかったけど、学生身分としては随分助かりました。
〈玉田〉
控室では分厚いステーキを食べさせてもらったし、コーラを初めて飲んだのもこの時でした。いまとなってはいい思い出です。
〈稲田〉
そんな学生時代を共にした玉田と、70年の時を経て、この8月に出版された『匠たちの「金言」』(致知出版社)に一緒に載るとは夢にも思いませんでした。
〈玉田〉
私も自分の一つ後ろを見てみたら、「おお、稲田だ」って(笑)。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ(約13,000字)~
◇大学時代を共に過ごした親友
◇90歳を越えてもなお進化するのが嬉しい
◇人間形成の根幹になった戦争・引き揚げ体験
◇人生何が生きてくるか分からない
◇介護生活を機に水泳に目覚める
◇ボニージャックス結成秘話
◇性格も性質も全く違うからこそ面白い
◇再起する原動力となった妻の励まし
◇世界中の期待に応えるために走る
◇妻の介護、メンバーとの別れ 迫り来る苦難を乗り越えて
◇老いて輝きを増す人 老いて衰える人
プロフィール
稲田 弘
いなだ・ひろむ――昭和7年大阪府生まれ。30年早稲田大学卒業後、NHKで放送記者として活躍。平成4年妻の看病のために定年退職後、運動不足解消を目的に水泳を始める。14年トライアスロンに初挑戦。24年アイアンマン世界選手権初完走、80-84歳カテゴリーでコースレコードを樹立。30年アイアンマン世界選手権85-89歳カテゴリーで世界チャンピオン、コースレコードを樹立。24、30年の年代別での優勝はギネス世界記録に認定。著書に『やれば出来る』(徳間書店)がある。
玉田元康
たまだ・もとやす――昭和9年旧満州安東市生まれ。終戦後に引き揚げて父の郷里・熊本県天草で過ごす。早稲田大学入学、早稲田大学グリークラブに入る。33年ボニージャックスとしてプロデビュー。日本レコード大賞童謡賞など受賞多数。現在はNPO法人日本国際童謡館に所属。令和7年90歳でアルバム「男たちの子守り歌」(キングレコード)でソロデビューを果たす。現在、歌手活動と老人保健施設いなぎ苑勤務との二刀流で活躍。
編集後記
弊誌人気連載「生涯現役」を中心に、90歳を超えても活躍し続ける方々のお話を収録した『匠たちの「金言」』。同書に掲載されているトライアスロン選手の稲田弘さんと歌手の玉田元康さんが早稲田大学時代の同級生だと知り、本企画が実現しました。本当に90代だろうかと目を見張るほど矍鑠(かくしゃく)としたお二人の姿、倦まず弛まず歩んできた挑戦の軌跡に、人生100年時代を生き抜くヒントを学びます。

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