いま、そこにある食料危機! 鈴木宣弘(東京大学大学院教授)

国内外で取り沙汰される問題について、各界の識者が鋭く切り込む連載「意見・判断」。
今回ご登場いただいたのは、農林水産省や九州大学大学院教授を経て、現在は東京大学大学院教授として、日本の食糧問題に真正面から向き合い鋭い提言を続ける鈴木宣弘教授です。
コロナ禍やウクライナ危機で浮き彫りになった、日本の食糧自給の脆弱さ、その原因と現状を詳しく解説しつつ、では今後私たちはどうすればよいかを語っていただきました。

一人でも多くの消費者が国産の安心安全な農産物を食べることの重要性を理解し、行動を起こすことである

鈴木宣弘
東京大学大学院教授

◆食料は輸入すればよいという前提が吹き飛んだ

かつて詩人の高村光太郎は、
「食うものだけは自給したい。これなくして真の独立はない」
と言った。

キューバの革命家ホセ・マルティも、
「食料を自給できない人たちは奴隷である」
と警鐘を鳴らしている。

ところが、日本の食料自給率は戦後一貫して下降を続け、先進国の中でも最低の37%(カロリーベース)にまで落ち込んでいる。にも拘(かかわ)らず、食料は海外から調達すればよいという安易な考えに囚われ、有効な打開策がほとんど講じられないまま放置されてきた。

しかしここへきて、コロナ禍による物流の停滞、中国による食料の爆買い、そして異常気象による不作で世界の食料供給は大幅に停滞、そこにとどめを刺す形でウクライナ紛争が勃発するという四つの非常事態が重なるクアトロ・ショックに見舞われた。自国民を守るために農産物の輸出を止める国は既に30か国にも上っており、食料を長らく海外へ依存し続けてきた日本は、いよいよ現実を直視せざるを得なくなった。


特に深刻なのが、化学肥料の不足である。

日本は化学肥料の製造に不可欠な原料であるリン、カリウムを100%、尿素も96%を海外から輸入している。しかし、リンと尿素を大きく依存する中国は国内の食料需要の急拡大に伴い輸出を大幅に制限しており、入手は極めて困難になっている。

加えてカリウムも、日本は輸入元のロシア、ベラルーシとウクライナ紛争で敵対する立場になったため、入手できなくなった。今年は何とか凌げたが、来年は農家への肥料供給が極めて困難になる可能性さえある。そうなれば、少なくとも農作物の収量は半減しかねない。

家畜の餌となる穀物を巡る状況も、同様に深刻である。
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〈本記事1ページ目より抜粋〉

プロフィール

鈴木宣弘

すずき・のぶひろ――昭和33年三重県生まれ。57年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学大学院教授を経て、平成18年東京大学大学院農学生命科学研究科教授。FTA産官学共同研究会委員、食料・農業・農村政策審議会委員、財務省関税・外国為替等審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員、コーネル大学客員教授などを歴任。著書に『食の戦争』(文春新書)『農業消滅』(平凡社)『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社)など。


編集後記

本記事では
 ◆食料は輸入すればよいという前提が吹き飛んだ
 ◆なぜ日本の食料自給率はここまで下がったのか
 ◆危険な食品が海を越えてやって来る
 ◆安心安全な国内の農家と手を結べ
といった4つの観点から、日本の食糧問題の現状と原因、さらに今後この課題をどう解決していくかを、地方で盛り上がりを見せる具体的な例を交えて解説しています。

普段何気なく口にしている食べ物は、果たして本当に安全なのか。
国民として、食の問題にどう向き合っていくべきか。
長年この問題に提言を続けてきた鈴木宣弘教授がその道を示唆してくれます。

2022年12月1日 発行/ 1 月号

特集 遂げずばやまじ

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