何としても取り戻す——拉致問題解決に懸ける思い 横田拓也 (「家族会」代表) 西岡 力( 「救う会」会長)

当時中学1年生だった横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されて45年の歳月が経過した。今日まで拉致被害者救出運動の先頭に立ってきたのが被害者の家族でつくる「家族会」とそれを支援する「救う会」である。政府間の交渉は依然膠着状態にあるが、「家族会」の横田拓也代表、「救う会」の西岡 力会長は共にいまも解決に向けて全力で走り続けている。「高齢となった親世代が健全なうちに何としても」という一念に、一刻も早い解決を祈らずにはおれない。

これは横田家の可哀想な話でもなければ、「家族会」の悲しいストーリーでもなく、日本人一人ひとりに突きつけられている人権や主権の問題なんです

横田拓也
「家族会」代表

〈横田〉
10月23日の「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」は、(北朝鮮が日本人の拉致を認め拉致被害者5名が帰国した)2002年の日朝首脳会談から20年ということもあって人々の大きな関心を集めましたね。

〈西岡〉
ええ。岸田文雄総理が元々入っていた外遊先のオーストラリアから早めに帰国して私たちの会にご参加くださったことは本当にありがたいことだと思っています。他にも松野博一官房長官・拉致問題担当大臣など国会議員、全国の地方議員の方をはじめ多くの皆様にご参加いただき、被害者救出に向けた意識を改めて固め合うことができました。

2021年12月に亡くなった「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)前代表の飯塚繁雄さんが11月の国民大集会で「諦めない」ということを3回おっしゃいましたね。

横田めぐみさんの拉致から45年、「家族会」結成から25年、日朝首脳会談から20年と、本当に長い期間がかかってしまいましたけど、諦めない、本日のテーマの「遂げずばやまじ」ということを確認する国民大集会になったと思います。

〈横田〉
「諦めない」という飯塚さんの言葉は、3代目の代表である私自身へのメッセージだと受け止めています。

「家族会」のメンバーが存命中でなかったら、被害者が帰国できたとしても国民は納得しないし、本当の意味で喜ぶことはできません

西岡 力
「救う会」会長

〈西岡〉
私たち「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)は「家族会」と共に救出活動に取り組んできたわけですが、いまだにすべての被害者を助けられないでいることが本当に悔しいですね。

それでもただ一つ言えるのは、救出運動をやめてしまったら絶対に助けられないということなんです。その意味で救出の努力を諦めない、続ける以外に道はないと。

〈横田〉
国民大集会でもいろいろな方が20年の節目ということを異口同音におっしゃっていて、その節目自体には確かに意味があることだと思いますが、当事者である我われにとっては毎日が節目なんですね。

歴史を遡ると1977年にめぐみがいなくなって20年間は全く手懸かりがない時代でした。それこそ生きているのか死んでいるのか、事故なのか自殺なのか誘拐なのか、当時の言葉で言うと「蒸発してしまった」状態で、私たち家族は生き地獄の毎日を過ごしていました。

それで日朝首脳会談が開かれると分かった時に、「めぐみとようやく会える」と根拠のない楽観的な淡い期待を持ったんです。一方で北朝鮮という国が通常ではない国家であることがおぼろげに分かってきて、「北朝鮮に生存していても、めぐみはすぐには帰国できないかもしれないな」と。そういう複雑な気持ちが交錯したのが20年前でした。

それから今日まで「家族会」と「救う会」、拉致議連合同で国内での講演会や集会、訪米活動を繰り返し、事態を一歩前進させようと努力はしてきましたが、20年続けてきて意志の結束はできたけれども、結局は政府が答えを出せていない。変わらない答えだけをいつも直視しなくてはいけない。いまだにそのような辛い状況が続いているんです。

プロフィール

横田拓也

よこた・たくや―昭和43年東京都生まれ。52年9歳の時に姉の横田めぐみさんが13歳で北朝鮮に拉致される。平成9年「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)が結成。28年事務局長。令和3年12月に3代目代表に就任。

西岡 力

にしおか・つとむ―昭和31年東京都生まれ。国際基督教大学卒業、筑波大学大学院地域研究科修了。平成2~14年月刊『現代コリア』編集長。29年3月まで東京基督教大学教授。現在は「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)会長。東京基督教大学教授を経て、モラロジー道徳教育財団教授、麗澤大学客員教授。平成26年正論大賞受賞。著書に『横田めぐみさんたちを取り戻すのは今しかない』(PHP研究所)『日韓「歴史認識問題」の40年』(草思社)など多数。


編集後記

2002年の日朝首脳会談から20年。しかしその後、拉致問題の進展は見られません。高齢の親世代が健全なうちにという「家族会」代表・横田拓也さん、「救う会」会長・西岡力さんの祈りにも似た強烈な思いを、日本人がどれだけ自分事と受け止められるかがいまこそ問われています。

2022年12月1日 発行/ 1 月号

特集 遂げずばやまじ

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