9 月号ピックアップ記事 /意見・判断
【緊急提言】日本の抑止力をいかに高めるか 番匠幸一郎(元陸上自衛隊西部方面総監) 兼原信克(元国家安全保障局次長)

中国の強大化、ロシアによるウクライナ侵攻――まさにいま世界の安全保障を巡る環境は激変の時を迎えている。その中で日本はいかに防衛力・抑止力を高め、危機の時代を生き抜いていけばよいのか。国際情勢、安全保障に精通する元国家安全保障局次長・兼原信克氏と元陸上自衛隊西部方面総監・番匠幸一郎氏のお二人に、日本が直面する厳しい現実と共に、国難を突破する具体策を提言いただいた。

愛すべき日本のために自分も何らかの役割を果たすんだという国民一人ひとりの気概が、国を守る上では大事
番匠幸一郎
元陸上自衛隊西部方面総監
理念や理屈を守ることで国民の命が失われてしまうというのでは、本末転倒です。
ウクライナの状況を見ていて、改めて抑止力は絶対に破綻させてはいけないという思いを強くしています。それは軍事力の面だけでなくて、同盟国との関係を深めて協力を得る、価値観を共有する新たな仲間を増やすということもそうです。
様々な面において、相手が手出しできない隙のない体制をつくっていかなければ、この激動の時代を生き抜くことはできない。そのことをウクライナは教えてくれています。

日本人が自国のために戦わなければ、アメリカは日本を助けに来てはくれません。同盟とはそういうもの
兼原信克
元国家安全保障局次長
とにかく、国民の命を守ることが一番大事である、ここに原点を置けば自ずと正しい防衛議論になっていくんです。
そもそも「非核三原則」「専守防衛」、あるいは「憲法九条」の理念、理屈を守るためなら国民はどんなに犠牲になってもいいという議論は、多大な犠牲を出した戦前の日本と同じ論理ですよ。「憲法九条」をどう守るかではなく、国民の命をどう守るかという議論をしていかないと、絶対に間違います。
プロフィール
番匠幸一郎
ばんしょう・こういちろう――昭和33年鹿児島県出身。55年防衛大学校卒業。平成12年米国陸軍戦略大学卒業。第三普通科連隊長兼名寄駐屯地司令、第一次イラク復興支援群長、幹部候補生学校長、陸上幕僚監部防衛部長、陸上幕僚副長、西部方面総監などを歴任し、27年退官。30年まで国家安全保障局顧問。現在は拓殖大学客員教授、全日本銃剣道連盟会長を務める。共著に『核兵器について、本音で話そう』(新潮新書)など。
兼原信克
かねはら・のぶかつ――昭和34年山口県生まれ。東大法学部卒業後、外務省入省。国際法、安全保障、ロシア(領土問題)が専門分野。条約局法規課長(現国際法課長)、北米局日米安全保障条約課長、国際法局長などを歴任。国外では米国、韓国の大使館や政府代表部に勤務。第二次安倍政権で内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。令和元年退官。著書に『日本の対中大戦略』(PHP新書)、共著に『核兵器について、本音で話そう』 (新潮新書)『国難に立ち向かう新国防論』(ビジネス社)など。
編集後記
中国、北朝鮮、ロシアと、核保有国の脅威に囲まれている日本。またアメリカの世界における威信の低下がその危機に拍車をかけています。
日本はいったいどうすれば自国を守り、この激動の国際情勢を生き抜いていくことができるのか。共に外交・防衛に精通する陸上自衛隊元西部方面総監の番匠幸一郎さんと、元国家安全保障局次長の兼原信克さんのお二人に、具体的な処方箋を語り合っていただきました。
実務家ならではの、机上の空論に終わらない国防論に日本が進むべき道を教えられます。

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