日々是前進 山口明夫(日本IBM社長)

言わずと知れた世界最大手のIT企業の一角であり、実に170か国以上で事業を展開するIBM。中でも、北米の本社に次いで第2位の好業績を出しているのが日本IBMです。2019年5月、エンジニア出身として初めて社長になった山口明夫さんに、全く予期していなかった入社からの歩み、先輩や同僚と苦楽を共にする中で掴んだ成長の要諦をお話しいただいた。

どんな無理難題でも不平不満を言わず、一つひとつ必死で取り組む。等身大のできない自分を認めて努力を続ける。その繰り返しが自分を成長させてくれ、多くの経験と新たなご縁を引き寄せていった

山口明夫
日本IBM社長

「おまえ、3年ももたないんじゃないか?」

大学の友人に心配されながら、仕事が忙しいことで知られていた日本IBMへ入社したのは1987年のことです。

和歌山の田舎で、名産の桃やみかんを栽培する農家の長男に生まれた私は、地元企業に就職するものと思っていました。大学では研究よりアルバイトに精を出していましたが、研究室の教授の推薦で恐る恐るIBMの人事担当者と面談、大量採用のタイミングと重なって内定をいただき、せっかくのご縁と考えてお受けしたのでした。

初めは希望通り大阪に配属され、コールセンターでシステムの障害対応に従事しましたが、2年で東京へ転勤となり、エンジニアとして都市銀行のシステム開発・保守の現場に放り込まれました。当時は大手銀行が次々と新システムを立ち上げていた時期で、体力のある若い人員が必要だったのです。

研修でコンピュータを学んだとはいえ、銀行業務を知らない私は全く仕事ができず、現場に通いながら無力感に苛まれる日々が続きました。

そんな私の支えとなったのが、お客様である同い年の銀行員の存在でした。私とは逆に、銀行員の立場でIT業務を遂行する上で悩んでいた彼と意気投合すると、お互いの会社で学んできた研修資料を使って、教え合うことで共に成長することができたのです。

その後も問題が起きる度に彼や周りの優秀な先輩たちに教えを請い、失敗を重ねながら仕事を覚えていきました。結局、15年間同じ現場を担当させてもらいましたが、この経験から自分の至らなさを痛感し、この道で仕事に尽くしている先輩方に尊敬の念を抱いたものです。

同時に、いろいろな人と協力する大切さ、社会人として働くとはどういうことかを教えてもらったように思います。

プロフィール

山口明夫

やまぐち・あきお――昭和39年和歌山県生まれ。昭和62年日本IBM入社。エンジニアとして金融機関のシステム開発・保守を担当後、アジア地域の2000年問題対策を指揮、その後、経営企画、マーケティング、米国IBM役員補佐などを歴任。
帰国後は次世代金融システムをはじめとする複雑な大規模システムの構築・統合、また幅広い業界のお客様とともに企業変革やIT人材育成を推進。平成19年よりコンサルティング、システム開発、アウトソーシングなどのサービス事業担当。令和元年5月から現職。 また米国本社の経営執行委員として、グローバルな戦略立案と実行にも関わる。


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