孔子の歩いた道 遺した言葉 加地伸行(大阪大学名誉教授) 數土文夫(JFEホールディングス名誉顧問)

2000年以上の時を越えて読み継がれてきた東洋古典『論語』。孔子とその高弟たちの言行録には、人間いかに生くべきかという原理原則が凝縮されている。中国思想研究の第一人者である加地伸行氏と古典の教えを経営に生かしてこられた數土文夫氏に、「孔子の歩いた道と遺した言葉」について語り合っていただいた。人間通・孔子がその生涯を通して奏でた詩とはいかなるものか。孔子に学ぶ人間学、ここにあり――。

もし絶海の孤島に一冊だけ本を持って行くならば、私は躊躇することなく、『論語』を選びます

加地伸行
大阪大学名誉教授

60数年にわたり何らかの形でずっと『論語』に携わってきましたが、『論語』は人間をありのままに見通し、幸福とは何かという視点に基づいて道徳を論じている本だと感じます。

親を大切にするとか夫婦は仲良くとか友人には真心を尽くすとか、決して難しいことは言っていませんが、そういう基本的な道徳を日常生活の中で実践できているか問われると、襟を正される思いがします。

もし絶海の孤島に一冊だけ本を持って行くならば、私は躊躇することなく、『論語』を選びます。また、皆さんにもお薦めしたいと心から感じています。

死ぬまで働くこと、身を修めることの大切さ。これこそ『論語』の究極の教えではないでしょうか

數土文夫
JFEホールディングス名誉顧問

年金だけを当てにして老後を暮らせないのは政治の責任だと言う人が一部にいますが、そんな国は世界中どこにもないですよ。

これはいかに国民が堕落しているかを露呈している、と言わざるを得ません。権利ばかりを主張する前に、果たすべき義務があることを忘れてはいけません。その堕落している国民に迎合している政治家もまた情けない。

孔子は苦労しながらも73歳で亡くなるまで働き続けた。死ぬまで働くこと、身を修めることの大切さ。これこそ『論語』の究極の教えではないでしょうか。二宮尊徳でも上杉鷹山でも中江藤樹でも西郷隆盛でも、倒れるまで働き続け、自己修養を怠らなかったわけです。

プロフィール

加地伸行

かじ・のぶゆき――昭和11年大阪府生まれ。京都大学文学部卒業。専門は中国哲学史。大阪大学名誉教授、立命館大学フェロー。平成20年第24回正論大賞受賞。著書多数。『論語』の関連書としては『論語全訳注増補版』『論語のこころ』(共に講談社学術文庫)『論語』『孔子』(共に角川ソフィア文庫)『論語入門 心の安らぎに』(幻冬舎)など。

數土文夫

すど・ふみお――昭和16年富山県生まれ。39年北海道大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。常務、副社長などを経て、平成13年社長に就任。15年経営統合後の鉄鋼事業会社JFEスチールの初代社長となる。17年JFEホールディングス社長に就任。経済同友会副代表幹事、日本放送協会経営委員会委員長、東京電力会長を歴任し、令和元年より現職。


編集後記

先般、弊社主催の「リーダーのための『論語』一日セミナー」で初対面を果たし、意気投合された加地伸行さんと數土文夫さん。東洋古典に造詣の深いお二人ならではの含蓄に富んだ対談となりました。聖人と称される孔子を様々な角度から照らしつつ、徳を高める道を探ります。

バックナンバーについて

致知バックナンバー

バックナンバーは、定期購読をご契約の方のみ
1冊からお求めいただけます

過去の「致知」の記事をお求めの方は、定期購読のお申込みをお願いいたします。1年間の定期購読をお申込みの後、バックナンバーのお申込み方法をご案内させていただきます。なおバックナンバーは在庫分のみの販売となります。

定期購読のお申込み

『致知』は書店ではお求めになれません。

電話でのお申込み

03-3796-2111 (代表)

受付時間 : 9:00~17:30(平日)

お支払い方法 : 振込用紙・クレジットカード

FAXでのお申込み

03-3796-2108

お支払い方法 : 振込用紙払い

閉じる