11 月号ピックアップ記事 /インタビュー
学問せよ 団結せよ 闘争せよ 佐々井秀嶺(インド仏教最高指導者)

ヒンドゥー教のカースト制度によって数千年にわたり差別され続けてきた不可触民を、万民平等を説く仏教に改宗させ、貧困と苦しみから救済し続けてきた日本人がいる。インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺上人、88歳である。コロナ禍が明け、4年ぶりに日本に一時帰国した佐々井上人に、苦悩に満ちた壮絶な半生と命を懸けて取り組んできたインド仏教復興運動の歩みを交え、幸福な人生、社会を実現していく要諦を伺った。

国を愛する心、父母を敬う心、神仏に手を合わせる心……心のあり方、倫理・道徳の確立なくして幸せな国家も人生もありません
佐々井秀嶺
インド仏教最高指導者
──佐々井上人はインド仏教最高指導者として、ヒンドゥー教のカースト制度に苦しむインドの貧しい人々の救済、仏教復興運動に50年以上にわたり力を尽くしてこられました。今回の日本への帰国は、新型コロナウイルスの影響もあり、4年ぶりだそうですね。
〈佐々井〉
留学していたタイからインドへ渡ったのが1967年、32歳の時です。その後、現地に骨を埋める覚悟でインド仏教復興運動に取り組み、(タイにいた2年間を含めて)44年ぶりに帰国したのが2009年でした。その時、私が一番に思ったことは、「日本には人間がいない」ということです。今回の帰国でも、またさらに人間が減ったなと感じます。
──人間がいない……それは具体的にどういうことでしょうか。
〈佐々井〉
一つには物理的な数ですね。都心から地方まで全国を歩いて回りましたが、東京でも人が少なくなったように感じますし、特に地方に人がいない。私の故郷は岡山県新見市ですが、駅前でも人通りが少なくて驚きました。人口が減るというのは、日本の将来にとって非常に大きな問題です。
──おっしゃる通りですね。
〈佐々井〉
もう一つは、日本人の心が次第に利己的に、空っぽになっているということです。日本人らしい日本人はどこに行ったのかと。確かにいまの日本は……(続きは本誌にて)
プロフィール
佐々井秀嶺
ささい・しゅうれい――昭和10年岡山県生まれ。青年期から人生に苦悩し、全国を放浪する。35年高尾山薬王院で得度。40年薬王院留学僧としてタイに渡り、インドの日本妙法寺で修行に励む。以後、現在に至るまでインドのナグプールを活動の中心に、布教活動や仏教遺跡の発掘、ブッダガヤ大菩提寺奪還運動などに取り組む。平成15年インドの仏教徒代表として中央政府少数者委員会に就任(3年間)。18年アンべートカル博士改宗50周年記念式典(黄金祭)の大導師。22年ナグプール郊外に龍樹菩薩大寺を建立。26年その活動を支援する「南天会」が発足。
編集後記
インド仏教の復興運動に生涯を尽くしてきた佐々井秀嶺さんのインタビューは2023年7月、東京・築地本願寺にて行われました。気さくな笑顔の中に時折見せる鋭い眼光から、貧しい人々を救いたいという、88歳の佐々井さんの燃えるような情熱と菩提心が伝わってきました。

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