11 月号ピックアップ記事 /インタビュー
がん闘病が教えてくれた私の幸福の条件 池田雅之(早稲田大学名誉教授)
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)や日本神話の研究、NPO法人「鎌倉てらこや」を通じた子供たちの教育事業に長年取り組んできた池田雅之氏を、突然の病が襲ったのは2019年春のことだった。以後、洋の東西を問わず様々な治療法を試みていく中で、人生観・生命観が大きく変わっていったという池田氏に、真の幸福を得るための条件、これからの時代に求められる日本人の生き方についてお話しいただいた。
様々な考え方や価値観を受け入れ、それぞれの違いを認め合う共生・共存、相互理解へと開かれた魂。
それこそが日本のみならず、世界、そしてこの一つしかない地球を救い、幸福に導いていく鍵になる。そう信じています
池田雅之
早稲田大学名誉教授
──池田さんは、『日本の面影』『怪談』などの著書でよく知られる小泉八雲や日本神話の研究に長年取り組んでこられましたが、数年前に大病を経験され、人生観が大きく変わったと伺っています。
〈池田〉
私は2017年に早稲田大学を70歳で退職したのですが、その頃から疲れやすいというか、体調があまりよくなかったんですね。それで2年後、健康診断で胃カメラを飲んだところ、思いがけず胃がんが発見されたんです。
──がんが見つかった。その宣告をどう受け止められましたか。
〈池田〉
それまで大きな病気はしたことがなかったので、まあ、ショックではありました。しかし、がんはいまや二人に一人が罹る国民病ですからね。目の前が真っ暗になるとか、怖いとかいう感情はありませんでした。ただ、手術後の3年間は家族以外にはがんになったことは一切公表せず、また、幸いコロナ禍でもあったので外出もせず、治療に専念できました。
──どんな治療を受けたのですか。
〈池田〉
都内の大病院で胃を内視鏡で切除する手術を受けました。ステージ2ということで全摘まではいきませんでしたが……(続きは本誌にて)
プロフィール
池田雅之
いけだ・まさゆき――昭和21年三重県生まれ。早稲田大学文学部英文科卒業。明治大学大学院博士課程修了。専門は比較文学、比較文化論。小泉八雲の『日本の面影』『日本の怪談』、T・S・エリオットの『キャッツ』など数多くの訳書を手掛ける翻訳家。文部科学大臣奨励賞、正力松太郎賞等を受賞。一般財団法人令和文化蔵理事。著書に『小泉八雲日本美と霊性の発見者』(KADOKAWA)、編著に『お伊勢参りと熊野詣』『熊野から読み解く記紀神話』など多数。
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