11 月号ピックアップ記事 /対談
企業繁栄への道——幸福の創造を求めて 青谷洋治(坂東太郎会長) 徳満義弘(南薩食鳥社長)
関東で和食レストランを中心に直営84店舗を展開する坂東太郎。鶏肉の加工・販売を手掛け、種鶏処理業界トップを走る鹿児島の南薩食鳥。共に幸福創造企業を目指し、社員・取引先・お客様の幸せを追求した経営に邁進している。それぞれの会社を率いてきた青谷洋治氏(左)と徳満義弘氏(右)に、いかにして理念を確立し、浸透させ、育ててきたか、語り合っていただいた。半世紀近くにわたるビジネス人生を通して掴んだ幸福の条件――。
勝ち負けの「競争」から共に新しい時代を創造する「共創」を価値観の中心に据える世界に入ってきていると感じます
青谷洋治
坂東太郎会長
〈青谷〉
私も創業して48年になります。あっという間でしたけど、創業当時は女房と弟の3人で小さな飲食店からスタートしたんですね。どうしてこの仕事を選んだかというと、ずばり生活優先。もともと農家の後継ぎでしたが、生活はままならず、どうしたら家族を食べさせることができるか、幸せにできるかを考えてのことです。
その時に、たまたまご縁のあったお蕎麦屋さんが私の修業を受け入れてくれました。人が10年かかるところを3年でやろうと自分で決め、結果として3年半で独立させてもらったんです。現在では、茨城・栃木・千葉・埼玉・群馬の各県で、和食レストランを中心に直営84店舗を展開し、正社員187名、アルバイトを含めると2300名以上になり、前期の売上高は96億円です。
これまでいろんな問題がありましたけど、経営する中で大事にしてきたのは「人が育つ会社をつくりたい」ということでした。坂東太郎でアルバイトをしていた子が「どこでこんな躾を受けてきたの」と言っていただけるような環境をつくりたい。レストラン業だけれども、本質的には学校みたいな会社をつくりたい。そういう思いでずっとやってきたんですね。
1つの会社が3代続くのはなかなか難しいと昔からよく言われます。徳満社長のように創業者の先代から引き受ける、私のように親から息子に引き継ぐ、いずれの場合でも大切なのは……(続きは本誌にて)
心の内にある怠惰や臆病、保身といった弱さに打ち克ち、挑戦することが私たちに求められる戦いだと考えています
徳満義弘
南薩食鳥社長
〈徳満〉
はじめまして。青谷会長のご本を読ませていただいて、すごくパワーを感じました。私なんか足元にも及ばないなと。
〈青谷〉
いやいや、私もご著書を拝読しましたが、徳満社長はよく勉強しておられるから、高い視座で文章表現をなさっている。私は中卒で社会に出て、50歳を過ぎて高校に進学しましたので、きょうは立派な方から勉強させてもらおうと思って伺いました。
〈徳満〉
私は大した学があるわけではありませんし、青谷会長のように創業者ではなく、サラリーマンからのスタートでした。大学を卒業して、児湯食鳥という南薩食鳥の元親会社に入社したのが47年前です。再建のため南薩食鳥に出向し、紆余曲折を経て社長を務めているわけで、先代社長と仕事に育てていただいたという気持ちが強くあります。
私どもは鹿児島の知覧に本社を構え、日本全国の食品メーカーや外食チェーン店、小売店などに対し、鶏肉の加工・販売を行っています。地元では最後発ながらも、関連法人のエヌチキンと二社合わせて、現在売上高は約90億円、従業員はパートさんを含めて500名ほどになりました。親鶏(採卵目的の鶏)とブロイラー(肉用鶏)の親になる種鶏を取り扱っており、おかげさまで種鶏処理業界の中でトップを走っているんです。
とはいえ、まだまだ地方の小さな会社で、これからさらに一人ひとりの社員が成長し、発展し続けなければならないと感じています。
プロフィール
青谷洋治
あおや・ようじ――昭和26年茨城県生まれ。42年中学卒業後、家業の農家を継ぐ。46年農業から飲食業に転身して3年半の修業を積み、50年境町に一号店を開店。61年㈱坂東太郎設立、社長就任。平成28年より現職。著書に『代々初代』(致知出版社)。
徳満義弘
とくみつ・よしひろ――昭和28年宮崎県生まれ。51年名古屋商科大学卒業後、児湯食鳥入社。55年会社再建のため出向という形で南薩食鳥の経営に参画。グループ最年少役員、社長代行を経て、平成7年社長就任。著書に『百年企業への挑戦』(致知出版社)。
編集後記
共に『致知』の愛読者で、時を同じくして弊社から著書を出版した坂東太郎会長の青谷洋治さんと南薩食鳥社長の徳満義弘さん。お二人は初対面でしたが、幸福創造企業を目指していることをはじめ、経営者としてのあり方や考え方に共通点が多く、学び多き二時間半となりました。
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