10 月号ピックアップ記事 /対談
いま、ここ、自分を精いっぱい生きる ~禅に学ぶ人間学~ 青山俊董(愛知専門尼僧堂堂頭) 横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
共に禅の道一筋に生き、師家として修行僧を導く、愛知専門尼僧堂堂頭・青山俊董師と臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺師。両師が長年禅の修行に励む中で得た多くの気づきは、まさに私たち人間が生きていく上で忘れてはならない法則そのものである。自分に与えられた場をいかに輝かせながら生きるか。両師が厳しい修行を通して掴んだ知恵に学びたい。
目の前の一つに遇って、それを大事に行じていく、それを道元様は「遇一行修一行」という言葉で示されました。それは行き着くところ、道元様を貫いた生き方であろうと思います
青山俊董
愛知専門尼僧堂堂頭
澤木老師は「正気になるほど自分のお粗末さ加減が分かる」とおっしゃった。法然上人の「松影の暗きは月の光かな」の句もそういう意味でしょうな。自分を照らす光が明るいほど暗い影が際立ってくる。自分を照らしてくださる光が明るいほどに、自分の中のマイナス、欠けている部分がはっきり見えてくるんですね。だから、要は修行に卒業はない、道窮まりなしということです。
「我がこの心こそが仏である、日常のあらゆる営みが仏の営みである」と自覚できれば、それが禅なのではないでしょうか。いかなる働きも仏の行いだとすれば、主体性を持っていきいきと生きなくてはいけない。そのように捉えればどんな仕事でも雑用というものはないわけです。
横田南嶺
臨済宗円覚寺派管長
禅とは特定の教義を持たず、結局はそれぞれの生き方こそが禅であるように思うんです。臨済宗の場合、個性的な老師方の集まりなのですが、そこに通底しているのは、心こそ仏、外に求めるものではないということでしょう。
プロフィール
青山俊董
あおやま・しゅんどう――昭和8年愛知県生まれ。5歳の時、長野県の曹洞宗無量寺に入門。駒澤大学仏教学部卒業、同大学院修了。51年より愛知専門尼僧堂堂頭。参禅指導、講演、執筆のほか、茶道、華道の教授としても禅の普及に努めている。平成16年女性では2人目の仏教伝道功労賞を受賞。21年曹洞宗の僧階「大教師」に尼僧として初めて就任。令和4年1月大本山総持寺の西堂に就任。著書に『道はるかなりとも』(佼成出版社)『一度きりの人生だから』(海竜社)『泥があるから、花は咲く』(幻冬舎)『あなたに贈る人生の道しるべ』(春秋社)など多数。
横田南嶺
よこた・なんれい――昭和39年和歌山県新宮市生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『人生を照らす禅の言葉』『禅が教える人生の大道』『命ある限り歩き続ける』(五木寛之氏との共著)『十牛図に学ぶ』(いずれも致知出版社)など多数。
編集後記
天地から与えられた命、いまここをどう生きるべきか。トップ対談は、禅の修行に長年打ち込んでこられた愛知専門尼僧堂堂頭・青山俊董さん、臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺さんでなくては語り得ない内容に興味が尽きません。滋味深い一つひとつのお話は、生き方の法則そのものです。
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