10 月号ピックアップ記事 /インタビュー
演劇の道、一筋に歩む——浅利慶太の思いを継いで 野村玲子(浅利演出事務所代表)
ミュージカルからストレートプレイ(台詞劇)、古典・現代劇に至るまで、俳優として数々のヒロインや主要な役を演じてきた野村玲子さん。現在は劇団四季の創設者であり、演劇の師・人生のパートナーでもあった故・浅利慶太氏の思いを受け継ぎ、俳優業と共に浅利氏が確立した演出や方法論の継承、後進の指導にも力を尽くしている。演劇の道を一途一心に歩んできた野村さんに、人々に感動を与える演劇の極意、よりよい人生を実現していく要諦をお話しいただいた。
才能や個性はそれぞれで、開花するタイミングも違います。才能・個性を生かすも殺すも、自分の信念、祈りを持ち、努力し続けられるかどうかだと思うのです
野村玲子
浅利演出事務所代表
――劇団四季にはどのように入団されたのですか。
〈野村〉
本当は高校卒業と同時にオーディションを受験したかったのですが、通っていた高校が商業高校だったこともあり、秋口には進路を決めなくてはいけなくて……。そうこうするうちに地元の銀行に就職することになったのです。
でも、合否に関係なく受験だけはしておきたいと思い、実は家族や学校に内緒で応募だけはしたんです。でも、結局卒業式と受験日が重なっていることが分かり、受けられませんでした。
それでも、銀行勤めをしながらいろいろな舞台を観る中で、「やっぱり私はお芝居がしたい」という思いがどんどん募って、1年後にオーディションを受けました。ありがたいことに合格させていただいて、単身上京しました。1981年、19歳の時のことです。
――とはいえ、合格するのは簡単ではなかったのではないですか。
〈野村〉
審査はこの場所(代々木アトリエ)で、面接は浅利にしてもらいました。でも「旭川出身なの?」と聞かれただけで終わってしまいましたので、絶対落ちたと思いました(笑)。当時は歌や踊りなど特別に秀でたものがなくても、お芝居への情熱、劇団のカラーに合うものが何かしらあれば採ってもらえたのかもしれません。とにかく、芝居好きの人が本当に多いんだなというのが印象でした。
ですから、入団してからよりむしろ勤め先を辞める時のほうが大変で、上司に「1年間、君の教育に払ったお金、まだ返してもらってないぞ」「夢に向かって進むのはいいが、人に迷惑をかけないのが社会人の基本だ」と、厳しい言葉をいただきました。それに両親からも「役者は親の死に目に会えないんだぞ」と反対されましたね。
でも、どんなに反対されても決意は変わらず、周りを説得して上京したんです。
プロフィール
野村玲子
のむら・りょうこ――北海道旭川市出身。劇団四季の舞台『ユタと不思議な仲間たち』の観劇をきっかけに演劇の道を志し、1981年劇団四季附属研究所入所。『エビータ』で初舞台を踏む。『オペラ座の怪人』『美女と野獣』日本初演のほか数々のミュージカルでヒロインを演じる。またストレートプレイ(台詞劇)でも『アンドロマック』『オンディーヌ』『アンチゴーヌ』などタイトロールをはじめ、古典から現代劇まで数多くの作品で主要な役を演じる。2003年劇団四季の創設者である浅利慶太氏と入籍。2015年劇団四季を退団後は、活動の場を浅利演出事務所に移す。2018年より同事務所代表を務める。
編集後記
俳優として多くの人々に夢と感動を与え続けている野村玲子さんに、人生の原点・転機となった舞台・演劇の師でありパートナー(夫)でもあった浅利慶太氏の教えなどについてお聴きしました。俳優一筋、一途一心の歩みから、自らの人生・仕事を開いていく要諦を教えられます。
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