この未曽有の国難にどう立ち向かうか 櫻井よしこ(ジャーナリスト) 青山繁晴(参議院議員)

中国湖北省武漢市で発生した新型ウイルスは全世界を席巻し、いまも猖獗を極めている。感染者数は5百万人を超え、死者数も34万人に達した。加えて、経済的な打撃も深刻だ。武漢ウイルスが発生した原因は何か、なぜ世界中に蔓延したか、目に見えないウイルスや中国の不穏な動きにどう対応すべきか、今後の世界の時流をいかに読み解くか。ジャーナリスト・櫻井よしこ氏と参議院議員・青山繁晴氏が問題の本質を鋭く突き、この危機を転じて未来を開くための指針を語り合う。

長い歴史を振り返ると、日本は実に多くの危機を国民が一致協力することで、賢く乗り切ってきました

櫻井よしこ
ジャーナリスト

 長い歴史を振り返ると、日本は実に多くの危機を国民が一致協力することで、賢く乗り切ってきました。そういう国はそう多くないと思うんですね。また、日本はすごく不思議な国で、いつの時代も世界のトップ水準にいるんですよ。
 まだ中華思想の世界にどっぷり浸かっていた時代に、聖徳太子は「日出処の天子」から始まる有名な手紙で、中国と対等の国であることを宣言し、文字通り対等の国として歩んだわけですね。
 時代は下って、8世紀になると天然痘が大流行し、多くの犠牲が出ました。そこで聖武天皇は鎮護国家と災異思想(人間の行為の善悪に応じて天が災害や異変をもたらす)のもとに東大寺の大仏や国分寺の建立を命じられ、聖武天皇のお妃・光明皇后もまた、悲田院や施薬院などの施設をつくられ、孤児や病人を救済されています。これは世界トップ水準の民を思う政治だと思うんですね。
 平安時代には紫式部や清少納言をはじめとする煌びやかな文学が並び立ちました。西洋でシェイクスピアが誕生する600年も前のことです。江戸時代は260年の間に人口が約1200万人から約3000万人と、倍以上になっている。いかに民が豊かな生活をしていたかが窺えます。明治時代には日清・日露戦争で、当時世界の一流国といわれる国に勝利したわけですね。
 ところが、たった一度、大東亜戦争で負けてぺちゃんこにされてしまった。世界の最貧国の一つに落ち、社会基盤を全部破壊されたにも拘らず、国民が一所懸命働き、あっという間に世界第二位の経済大国に駆け上がっていくわけです。
 その時々で国の形は随分違いますけれども、我われの先祖は変化に対応し、乗り越え、日本国を創ってきたんですね。その根底に流れているのは、利他の心、公の精神、責任感、そういう立派な国民性だと私は思います。

「不撓」で立ち向かうのは当たり前。「百折」こそ大事であって、どんどん失敗を経験してそれを糧にすべきです

青山繁晴
参議院議員

 今回、「百折不撓」という特集を組まれたのは、実に適切だと思うんです。別に『致知』に媚びて言うんじゃなくて、実際に僕自身の議員としての日々と通ずるものがあるからです。
 総理は当初、減収世帯に限り30万円を現金給付するという間違った決断をされ、それを組み込んで補正予算案までつくりました。僕は「いや、国民一律の十万円にしましょう」と主張し続けたわけですが、離党したり他党と組んだり、ましてや議員辞職して実現できるわけがありません。あくまで内部に留まって百折を経験して、しかし不撓不屈の精神でやって、実際に覆りました。最後の花は公明党が持っていいのです。
 その経験も含めて申すと、「百折不撓」で大事なのは、「不撓」ではなく、「百折」にあると思っています。櫻井先生がおっしゃったように、二千年以上の歴史を積み上げてきた国が、たった一回戦争に負けただけでぺちゃんこになったのは、それまで1ミリ4方たりとも領土を占領されたことがないからです。つまり、失敗経験がないので、どうしたらいいか分からない。それが実に75年間続いているんです。
 安倍政権も第一次政権の無惨な終わり方、百折に値するくらいの失敗をしたから、いろんな課題はあるとはいえ、足掛け8年も維持できている。これは日本の政治史上、画期的なことです。安倍総理が平和安全法制を通したことも素晴らしいですが、それ以上に「失敗こそ財産だ」という教訓をつくってくれています。
 どんな状況でも屈したら終わりですから、「不撓」で立ち向かうのはある意味当たり前で、やっぱり「百折」こそ大事であって、どんどん失敗を経験し、そこにこそ生きるべきではないでしょうか。

プロフィール

櫻井よしこ

さくらい・よしこ――ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスター等を経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年「国家基本問題研究所」を設立し、理事長に就任。23年日本再生に向けた精力的な言論活動が評価され、第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。最新刊に『言語道断』(新潮社)がある。

青山繁晴

あおやま・しげはる――昭和27年兵庫県生まれ。慶應義塾大学文学部中退、早稲田大学政治経済学部卒業。共同通信社記者、三菱総合研究所研究員を経て、平成14年独立総合研究所を創立し、代表取締役社長兼首席研究員に就任。28年参議院議員に当選。「日本の尊厳と国益を護る会」代表。東京大学と近畿大学で教鞭も執る。著書多数。最新刊に『その通りになる王道日本、覇道中国、火道米国』(扶桑社新書)がある。


編集後記

武漢ウイルスによる感染症はパンデミックを引き起こし、未だ終息の兆しは見えません。私たちはこの国難にどう対処すべきでしょうか。言わずと知れた保守論壇の重鎮・櫻井よしこさんと、国家危機管理の柱の一つとしてウイルス問題に長年携わっている参議院議員・青山繁晴さんに、大所高所から語り合っていただきました。

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