子供の未来をひらく教育 大川繁子(小俣幼児生活団 主任保育士)

92歳のいまなお、現役の保育士として子育てにあたっている大川繁子さん。主任保育士を務める小俣幼児生活団は、規則がなくても自立した子が育つ「奇跡の保育園」と呼ばれている。モンテッソーリ教育とアドラー心理学の〝いいとこ取り〟をしたという教育法とはどのようなものか。園児一人ひとりの花を咲かせようとする大川さんが60年の実践の中で掴んだ叡智――。

当園が目指しているのは「すごい子供」を育てる保育ではありません。一人ひとりが持っている力を最大限に発揮させる教育です。

大川繁子
小俣幼児生活団 主任保育士

 その他実施しているのがバイキング形式の給食です。お弁当や決まった量の給食が出る園が多い中、小俣幼児生活団では二歳児以降は自分で食べたいものを食べたいだけ取るバイキング形式の昼食を採用しています。
 これも次男の発案でした。子供だってお腹がすいてない日もあれば、好き嫌いだってあるはず。それを否定するのではなく、自分のことは自分で決める力、それに責任を持つ力を身につけてほしいという思いからスタートさせました。
 もちろん、始めから上手にできる子供はいません。取り過ぎて食べきれない子、一種類だけよそってしまう子、食が細くてほぼ食べない子などいろいろいます。それでも先生はあまり口出しせず、「きょうの量はちょっと多過ぎたね」「こんなに取ると他の子の分がなくなっちゃわないかな?」などと声を掛けて、子供たちに考えさせる習慣をつけています。
 当然、いきなり「決める」ことは難しいため、一歳頃から「選ぶ」練習をしています。例えば、全く同じおしぼりを二つ用意し、子供に「どっちがいい?」と聞いて選んでもらうのです。他にも「今日は牛乳と麦茶どっちがいい?」「お味噌汁はどのくらいよそう?」など、できるだけ自分で決めてもらうように促しています。

プロフィール

大川繁子

おおかわ・しげこー昭和2年生まれ。20年東京女子大学数学科入学。37年小俣幼児生活団に就職し、47年に主任保育士となる。足利市教育委員、宇都宮裁判所家事調停委員、足利市女性問題懇話会座長などを歴任。


編集後記

六十年近く幼児教育に情熱を傾け続ける小俣幼児生活団主任保育士・大川繁子さん、九十二歳。怒らない、叱らないといった独自の教育方針もさることながら、その矍鑠としたお姿に感動を覚えます。

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