3 月号ピックアップ記事 /対談
経営とは意志である 山本善政(ハードオフコーポレーション会長) 山井 太(スノーピーク社長)
「お客様のウォンツとニーズに従う」という思いのもと、全国約900店舗のリユースショップを展開するハードオフコーポレーションの山本善政会長。「人間性の回復」をキーワードに、アウトドア事業を通じて新しいライフバリューを提案しているスノーピークの山井太社長。共に新潟発の零細企業を業界のリーディングカンパニーに育て、世界を舞台に活躍し続けるお二方に、いかに経営を伸ばしてきたのか、その志と挑戦の軌跡を伺った。
リーダーたる者は理念の伝道師であるべき。どこに向かうのか、方向性を明確に示すことが大事
山本善政
ハードオフコーポレーション会長
山井 山本さんと初めてお会いしたこの部屋(ハードオフコーポレーションの会長室)で、きょうは対談ができるというので楽しみに参りました。
山本 確か山井さんの会社が上場する3~4年前でしたよね。
山井 2010年か2011年ですね。ある時、証券会社の営業マンに「売上高が30億円になったら上場するか検討しようと思っている」と話したところ、「それなら新発田に行きませんか? 同じ新潟県の一部上場企業であるハードオフコーポレーションの山本さんにぜひ会ってください」と言って、僕をここに連れてきたんです。
その時の最初の会話は忘れもしません。開口一番、「お前、経営者だよな」と聞かれて、「はい、経営者です」と答えると、「お前、男だよな? 男ならなぜ一部上場を目指さないのか!」と。いきなりそう言われたのでカチンときて(笑)、その場で「上場します」と啖呵を切ってしまいました。
山本 山井さんには理屈で言うより体感させたほうがいいと思い、上場の時にもらった盾や打鐘用の木槌などをまず持たせて……。
山井 「これが上場の重みだ」みたいな(笑)。山本さんの話を伺う中で、それまでぼやっとしていた上場というものを、明確に意識したことを覚えています。
好きなことをやり続ける正しさを世の中に証明するためにも、我われには成長する使命がある
山井 太
スノーピーク社長
山本 実際に上場を果たしたことによって、おそらく当初思っていた何倍ものバリューを感じているのではないですか?
山井 その通りです。上場当時、2014年の売上高は57億円でしたが、いま約140億円(2019年12月期予想)になりました。上場していなかったら70億円くらいだったと思います。
上場してから5年間、何度も自社のことを客観的に見つめ直しましたし、投資家にも分かるような言葉で自分たちの思いを言語化し、ポテンシャル(潜在力)を顕在化させることを追求してきたので、それはすごくよかったですね。
同時に、上場企業の責任の重さも痛感しています。同じことをやるにしても、求められる精度の高さや結果へのコミットメントは全く異なります。百やると公言したことが九十しかできなかったら、未上場の場合は「残念だったね」と反省して終わりますけど、上場の場合は社会的責任が問われる。経営とは真剣勝負の世界であると改めて実感しています。
プロフィール
山本善政
やまもと・よしまさ――昭和23年新潟県生まれ。45年拓殖大学卒業後、スーパーマーケット「よしや」入社。47年サウンド北越を設立。平成5年リユース品の仕入れ販売を行うハードオフに業態変更。7年ハードオフコーポレーションに商号変更。12年ジャスダック上場、17年東証一部上場。
山井 太
やまい・とおる――昭和34年新潟県生まれ。明治大学卒業後、外資系商社勤務を経て、61年父親が創業したヤマコウに入社。平成8年社長就任と同時に社名をスノーピークに変更。26年マザーズ上場、翌年東証一部上場。著書に『スノーピーク「楽しいまま!」成長を続ける経営』(日経BP社)など。
編集後記
国内外でリユース業を手がけるハードオフコーポレーション会長の山本善政さん。山本さんをメンターと仰ぎ、アウトドア事業を展開するスノーピーク社長の山井太さん。師弟であり同志でもあるお二人は、共に新潟に本社を構えるグローバル企業として第一線で経営の舵を取っています。情熱溢れる経営談義に興味が尽きません。
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