9 月号ピックアップ記事 /百年企業はどこが違うのか
創業163年 石川酒造 石川彌八郎(石川酒造蔵元) 藤間秋男(TOMAコンサルタンツグループ会長)

銘酒「多満自慢(たまじまん)」にクラフトビールの「多摩の恵」「TOKYO BLUES」。多摩の豊かな自然の中で、丹誠込めた酒造りを営んできた石川酒造。地元で400年の歴史を刻んできた旧家・石川家の歩みと共に、十八代当主の石川彌八郎氏が直面した試練、そして氏が見据える未来に迫った。

一時の儲けに目が眩んで阿漕(あこぎ)なことをすると、周囲から恨まれて、たとえその代はよくても次の代が大変です。
やっぱり皆さんから喜ばれ、いざという時に助けてもらえるような誠実な商売をすることが大切だと思います
石川彌八郎
石川酒造蔵元
〈藤間〉
多摩の豊かな自然に囲まれたこちらの御社の敷地には、白壁の建造物が建ち並んでいて、とても趣のある空間になっていますね。
〈石川〉
私で十八代目になる石川家は、400年ほど前から地元の旧熊川村(現在は東京都福生市)界隈の集落を統括する名主総代を務めてきた家系で、昔からコミュニティの中心的役割を担ってきましてね。
いまは「酒飲みのテーマパーク」という触れ込みで、この3,000坪の敷地に国の有形文化財に指定された酒蔵などの建造物や、樹齢700年を超える御神木、限定酒を提供するレストランや売店、酒蔵に宿泊できるゲストハウスなどを設けて、たくさんの方にお越しいただいています。
〈藤間〉
石川家では、いつ頃から酒造りを営んでこられたのですか。
〈石川〉
酒蔵ができたのは1883(明治16)年ですが、創業は江戸時代の1863(文久3)年なんです。そこの多摩川の向こう岸にあった酒屋さんの跡取りがいなくなって、十三代石川彌八郎が酒蔵を借りてお酒造りを始めました。その後こちらに蔵を設けて酒質の改良を重ね、1933(昭和8)年に当社の代表銘柄である「多満自慢」を開発しました。
〈藤間〉
酒造りを始めるまでは何をなさっていたのですか。
〈石川〉
記録が残っているのが1600年くらいからなので推測になりますが、もともとは坂東武者で、戦国時代にどこかの武将に仕え、江戸時代に入ってから帰農したようです。
この近隣にはそういう旧家が多くて、主は大概、北条か武田ですよ。いずれにしても、敗れた側に仕えていたというのは不都合な事実ですから、証拠になるものはすべて処分してしまった。だから記録が残っていないのでしょうね。
〈藤間〉
一つ間違えればお家断絶という時代を、必死で生き延びてこられたのでしょうね。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇地元と共に400年 戦後に酒造業で飛躍
◇地ビールに懸けた大勝負
◇苦境を乗り越える原動力になるもの
◇地域コミュニティの核として

〈ホスト〉
藤間秋男(とうま・あきお)
TOMAコンサルタンツグループ会長
昭和27年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。公認会計士税理士。明治23年創業の藤間司法書士事務所の末裔として、昭和57年藤間公認会計士税理士事務所を新規創業。230名の総合コンサルファームにTOMAグループを成長させ、平成29年より会長。著書に『中小企業の事業承継はじめに読む本』(すばる舎)『100年残したい日本の会社』(扶桑社)など多数。
プロフィール
石川彌八郎
いしかわ・やはちろう――昭和39年東京都生まれ。平成2年東海大学政治経済学部卒業。石川酒造入社。14年社長に就任。25年第18代石川彌八郎を襲名。令和2年大多摩ハム会長に就任。
編集後記
事業承継コンサルタントとして百年続く企業づくりに取り組む藤間秋男氏が、百年企業の強さの秘密を探る本連載。第9回となる今回は、多摩の豊かな自然に囲まれた中で代々酒造りを営んできた「石川酒造」の石川彌八郎蔵元にご登場いただきました。取材が行われた「酒飲みのテーマパーク」と呼ばれる石川酒造の敷地内には、限定酒を提供するレストランや酒蔵に宿泊できるゲストハウスなどがあり、平日にも拘らず観光客や地元の方々で賑わっている様子が印象的でした。

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