9 月号ピックアップ記事 /インタビュー
高知をレスリング王国へ ~オリンピック金メダルはかくして実現した~ 櫻井優史(高知レスリングクラブ代表)

世界の強豪との激闘を制し、パリ2024オリンピックにて金メダルに輝いたレスリング選手の櫻井つぐみさんと清岡幸大郎さん。その2人の金メダリストを幼少期から育ててきたのが、高知レスリングクラブ代表の櫻井優史氏である。「高知をレスリング王国に」という夢に向かって邁進する櫻井氏に、世界レベルの選手を育てる要諦、いま求められる指導者のあり方についてお話しいただいた。

何より大事なのは、指導者自身がめざすものを持つことではないでしょうか。私は金メダリストを育てたいという夢、目標を抱いて子供たちに向き合ってきました。
めざすものがあったからこそ苦しい時でも頑張ってくることができましたし、自分自身ここまで成長することができました
櫻井優史
高知レスリングクラブ代表
<櫻井>
私が2004年に高知レスリングクラブを設立した時、つぐみは2歳、幼馴染みの幸大郎は3歳でした。それから2人にレスリングを教えるようになって、オリンピック金メダルという夢に向かって約20年頑張ってきました。
オリンピック金メダルは、つぐみと幸大郎の夢であり、私の夢でもありましたから、パリで見事にそれを叶えてくれた2人には本当に感謝しかありません。しかも初出場ながら揃って金メダルという奇跡のような快挙を成し遂げてくれた。長い年月をかけ積み上げてきたものをオリンピック金メダルというこれ以上ない結果として出し切ってくれて、指導者としてとても感慨深いものがあります。
――長年積み重ねてきた努力が最高の舞台で花開いたのですね。
<櫻井>
オリンピックは4年に一度の舞台ですから、プレッシャーは相当なものだったと思います。
ただ、試合前、「いつも通りしっかり集中してやろう」と声を掛けたところ、2人とも本当に普段通りで、オリンピックの舞台を楽しもう、いつも通りやろうという雰囲気で試合に臨んでいました。そう自信を持てるだけの努力を積み重ねてきたということでしょう。実際、2人とも驚くくらい堂々とした、過去最高の戦いをしてくれました。
――いまは指導者としてどのようなことに力を入れていますか。
<櫻井>
やはり一つは第二、第三のつぐみ、幸大郎を育てるということですね。今年開催されるアジア競技大会の代表になった幸大郎の妹・清岡もえ、アンダー20で世界選手権二連覇を達成した西内悠人など、次のロサンゼルス2028オリンピックをめざしていく世代をまずしっかりサポートすること。
それから、その下の世代では、アンダー17アジア選手権で三位に入った藤原尚大、アンダー15アジア選手権で二連覇したつぐみの妹(三女)つきのが、頑張って成長しています。彼ら彼女らがブリスベン2032オリンピックに出場し、金メダルを獲得できるように導いていくことも大事な目標です。
――次に世界を狙える選手が、どんどん育っているわけですね。
<櫻井>
うちのクラブは日本一ではなく、「世界で勝てるレスリング」を常に目標にしています。やはり世界をめざしたほうが子供たちの意識が全然違ってくるんです。それに、つぐみや幸大郎が世界の舞台で活躍しているのを見ると、後輩も「自分たちもできる!」と自己効力感が高まって、自然と世界を基準に頑張るようになります。………(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全5ページ)
◇高知出身選手として92年ぶりの金メダル
◇人生を変えた恩師との出逢い
◇一念発起してレスリングクラブを設立
◇自分のコピーではなく自分を超える選手を育てる
◇負けをバネにしてさらに成長する
◇お互いに認め合う切磋琢磨が勝利を導く
◇高知をレスリング王国へ夢に向かって邁進する
本記事では櫻井さんに、世界を舞台に活躍する選手を育てる要訣、指導者の条件などについて語り尽くしていただきました。人を育てるヒントが満載です。
プロフィール
櫻井優史
さくらい・ゆうじ――昭和50年香川県生まれ。高松北高校でレスリングを始め、高校三年時に国体のグレコローマン46㎏級で優勝。群馬大学教育学部卒業後、平成10年から高知県の県立高校の教員としてレスリングの指導に携わり、16年にジュニア選手を育成する高知レスリングクラブを設立。以後、パリ2024オリンピックで金メダルを獲得した櫻井つぐみ氏や清岡幸大郎氏をはじめ、数々のトップ選手を育てる。令和4年「龍馬賞」受賞。高知県移住支援特使。
編集後記
取材は、櫻井優史さんが指導する高知東高校のレスリング場にて行われました。多くの世界トップ選手を育ててきた櫻井さんが語ってくださったのは、選手自身の努力はもちろん、指導者自らが常に勉強し、変わり続ける大切さでした。指導者の成長が選手たちの成長である、そのことを教えられる気づきが満載のインタビューでした。

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