経営と修行に通底するあり方 大久保秀夫(フォーバル会長) 宮本祖豊(比叡山延暦寺観明院住職)

経営者と僧侶――歩んできた道は違えども、フォーバル会長の大久保秀夫氏と比叡山延暦寺観明院住職の宮本祖豊氏は、共に20代で志を抱き、数多くの困難や逆境に立ち向かい、精神を鍛え、秘めた可能性を引き出し、人格の完成と縁ある人々を幸せに導くことをめざす点で共通している。さらには60代でそれぞれ脳梗塞と末期がんという試練に直面しながらも、決して屈することなく、いまなお前進を続け、感謝と反省の日々を送っているという。そんなお二人の求道者の生き方に学ぶものは多い。人間学の真髄ここにあり――。

「初発心時(しょほっしんじ)、便成正覚(べんじょうしょうがく)」
人は結果を気にしますが、結果より過程、過程より最初の動機が大切であり、その最初の動機が純粋で利他であればあるほど、その心が堅固であればあるほど、速やかに成就するものだと思います

宮本祖豊
比叡山延暦寺観明院住職

〈宮本〉 
大久保会長、お久しぶりでございます。

〈大久保〉
宮本先生、こんにちは。お元気そうですね。ご体調はいかがですか。

〈宮本〉
膀胱がんに罹ってもう6年になりますけれども、膀胱がんは他のがんに比べて標準の抗がん剤の種類が少なく、いずれは効く薬がなくなるだろうと分かっていました。

そこで3年くらい前にアメリカのゲノム検査を受けまして、AIでもって私の体に合う抗がん剤を探してくれましてね。実際に効き目があって腫瘍が小さくなり、いまも治療を続けています。

〈大久保〉 
それは何よりです。まさにAIの力、恐るべしですね。

〈宮本〉
こんなところでお世話になると思っていませんでした(笑)。

「失ったものを悲しむのではなく、残ったものを最大限に生かそう」
なんでこうなっちゃったんだと後悔しても、先には進まない。どんな厳しい状況になったとしても、これは天が何かを教えてくれているとプラスに受け止める解釈力が大事だと思います

大久保秀夫
フォーバル会長

〈大久保〉 
宮本先生とご縁をいただいたのは、いまから4年前の2022年9月でした。その年の6月号の『致知』に宮本先生の記事が掲載されていて素晴らしい方がいらっしゃるなと。ぜひお話を聴きたいと思って、知人に紹介してもらったのがきっかけでした。

実はその時に一度アポイントを取ったものの、先生が体調を崩して入院されましたよね。その後、回復なさったというので私が主宰する経営者の会の会員と共に伺い、比叡山からほど近い琵琶湖の畔にあるホテルで、講義と質疑応答を含めて2時間くらいお話を頂戴しました。きょうと同じように健常者以上に元気いっぱいで、「本当にがんなのかなぁ、この先生は」と驚いたんですね(笑)。

〈宮本〉 
企業の方から講演依頼をいただくことは時々あるのですが、トップ自らがインタビュアーとなって質問をたくさん出してくれるというのは滅多にない。その点からしても、大久保会長は前向きでバイタリティのある方だなと非常に感銘を受けました。

〈大久保〉 
初めてお会いして感じたのは人間としての迫力や深さです。どんな質問も的確に答えてくれるんですね。頭脳明晰な方だと思いました。しかも一切迷いがない。普通の人はちょっと考え込むんですけど、先生は間髪を容れずに即答される。さすが厳しい修行を積み重ね、十二年籠山行を満行された名僧は違うなと驚嘆しました。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全10ページ(約13,000字)~
◇『致知』を通じて結ばれたご縁
◇問うべきはやり方ではなくあり方
◇難しいことを分かりやすく伝える
◇それぞれの原点と一生を貫く信条
◇稲盛和夫氏の叱咤で覚悟が定まった
◇堀澤祖門師匠の教えを信じて
◇いまこの一瞬に命を懸ける
◇言い訳しない、逃げない、諦めない
◇人を育てる秘訣は気づきと率先垂範
◇大病という試練を通して得た気づき
◇困難や逆境にどう処していくか
◇40年以上にわたって欠かさない習慣

プロフィール

大久保秀夫

おおくぼ・ひでお――昭和29年東京都生まれ。52年國學院大學卒業後、婦人服メーカー、外資系教材販売会社を経て、55年25歳で新日本工販(現・フォーバル/東証スタンダード市場上場)設立、社長就任。63年日本最短記録、史上最年少(共に当時)で店頭登録銘柄として株式を公開。平成22年より現職。著書多数。最新刊に『絶対つぶれない会社をつくる方法』(致知出版社)。

宮本祖豊

みやもと・そほう――昭和35年北海道生まれ。59年出家得度。平成9年好相行満行。21年比叡山で最も厳しい修行の一つである十二年籠山行満行を果たす(戦後6人目)。比叡山延暦寺円龍院住職、比叡山延暦寺居士林所長などを経て現在は観明院住職、延暦寺別当大師堂輪番を務める。著書に『覚悟の力』、最新刊に『積徳のすすめ』(共に致知出版社)。


編集後記

このほど弊社から刊行された大久保秀夫さんの『絶対つぶれない会社をつくる方法』の中に、「心を磨く上で参考になる話」として、宮本祖豊さんに直接会いに行き、感銘を受けたことが綴られています。そこに着想を得て、お二人の対談を企画しました。宮本さんの体調不良により、取材は急遽オンラインで行うことになったものの、2時間にわたって深い人間学談義に花を咲かせました。40年以上、一道に打ち込んでこられた方の言葉には迫力があります。

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