大豆の種蒔きに託す日本の未来 辰巳芳子(料理研究家)

料理研究家という範疇を超え、「良い食材を伝える会」や「大豆100粒運動」などを各地で展開する辰巳芳子さん、93歳。若くして病魔に侵され、長期の療養生活を余儀なくされながらも料理研究家として立たれた半生を振り返っていただくとともに、いまもご自身を突き動かし続ける根源的な思いについてお話しいただいた

神様が望まれている仕事からは逃げない、どんな仕事であっても心と力と意の3つを全部使ってベストを尽くす、ということを自らに課してやってきました。

辰巳芳子
料理研究家

「スープの会」に参加しているのは奥様方がほとんどですけど、本物の板前とかコックが時々入ってこられます。私はね、本職の料理人が来てくださるのは、とても嬉しいの。というのは、本職の方が1人でも2人でもいれば、教室で習ったことを実践していただくことで、後の広がり方がうんと違ってくるでしょう。
 やっぱりね、お料理をするからには、スープを一番大切にしなくてはいけません。なぜそう考えているのかと言うと、私の恩師である加藤正之先生は、スープと野菜に一生を捧げたような方だったんです。加藤先生は宮内庁の大膳寮に勤められていて、昭和天皇の料理番として有名な秋山徳蔵さんと一緒に仕事をしていた方でもありました。私はその加藤先生から20年以上スープのことを教えていただいたんです。
 何とも言えない誠実な方で、いまでも料理をつくっていると加藤先生のお声が耳元で聴こえてくるんですよ。ですから、先生への恩返しのためにも、私はスープをやらなければと思ってこれまでずっとやってきました。

 修業というのは2、3年ちょっとやったくらいではダメで、10年単位の修業が不可欠です。しかもスープ1つとっても、汲めども尽きないものがある。
 それに本当の仕事をやるなら、とにかく無心にならないとできません。道元の言葉に「雑務と本務の区別はない」とありますけど、やり込んだ方の言葉は違いますよね。あれこれ仕事を区別することなく、目の前の仕事に没頭してやり切っていくことの大切さを説いた道元の言葉を、私は仕事の心得として大切にしてきました。

プロフィール

辰巳芳子

たつみ・よしこ―大正13年東京生まれ。料理研究の草分けだった母・辰巳浜子のもとで日本の家庭料理を学ぶ一方、西洋料理の研鑽も重ねる。スープ教室「スープの会」を主宰。「良い食材を伝える会」会長、「大豆100粒運動を支える会」会長、「確かな味を造る会」最高顧問を務める。著書に『いのちと味覚』(NHK出版)など多数。


2018年8月1日 発行/ 9 月号

特集 内発力

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