12 月号ピックアップ記事 /インタビュー
十字架を背負いながら前を向いて生きる 湯木尚二(日本料理 湯木 店主)
![](https://www.chichi.co.jp/htdocs/wp-content/uploads/2020/11/202012_yuki_top.jpg)
2007年、老舗日本料亭・船場𠮷兆が起こした食品偽装問題は世間を震撼させた。経営陣の一人であった湯木尚二氏はいかにしてどん底から這い上がり、再び大阪の地で高級日本料理屋を4店舗経営するまでになったのか。苦境の末に掴んだ人生の真理と共に、今日までの歩みを伺った。
※写真は1995年、心斎橋店出店の際に店長を任された湯木尚二氏(26歳)と祖父の湯木貞一氏(94歳)
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湯木貞一
𠮷兆創業者/料理界初となる文化功労者
~今回のインタビューでは下記の内容が掲載されています~
■湯木貞一氏の教えを受け継ぐ日本料理
■「吉兆」で習った料理人としての基礎
■食品偽装問題の真相
■日本料理の世界で再起を図る
■不祥事から学んだリーダーのあり方
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お好み焼の専門店 「千房」の創業者・中井政嗣さんから、「谷深ければ山高し」との言葉をいただいたことがあります。いまようやく、ここまで這い上がってきたのだから、しっかりと脇を締め直して、二度と過ちを繰り返すことのないように、との訓戒と受け止めています
湯木尚二
日本料理 湯木 店主
祖父は就寝前に住み込みの若い板前さんと料理に関する問答を行いながらマッサージをしてもらうのを日課にしていましたので、私も板前さんに交ざって、なるべく祖父の傍にいる時間を増やしました。マッサージは大体22時頃から始めて、祖父が眠りに就くまで行うのですが、長い時には2~3時間かかることもありました。はっきり申し上げて、最初の頃は苦痛で仕方ありませんでした。
ある夜、友人と遊びの予定があり、マッサージを早く終わらせようと思って祖父の元に向かうと、その日に限ってまだ横になるどころか、急遽予約の入ったお客様の献立に頭を悩ませていました。
その時、私は自分の予定を優先し、祖父に「きょうは早めにお休みになって、明日にしはったらどうですか?」と声を掛けました。すると、祖父から予想もしなかった言葉が返ってきました。「それでも料理屋の息子か!」と初めて怒られたんです。
「日本料理の神髄はもてなしの心や。お客様はどんな料理が楽しめるのか期待してはるのだから、その期待に最高のおもてなしでお応えするのが、私たち料理人の仕事のやりがいや」と30分くらい説教を受けましてね。これは一生忘れられない出来事です。
プロフィール
湯木尚二
ゆき・しょうじ―――昭和44年大阪府生まれ。高校1年生の頃から実家である船場吉兆本店でアルバイトを始め、大学卒業後入社。平成7年、船場吉兆心斎橋店オープンに伴い店長に就任。11年福岡に新店舗を進出させる。19年食品偽装問題が露呈し、翌年1月に退職を余儀なくされた。22年10月に「南地ゆきや。」を開業し、23年3月に大阪・北新地に「日本料理 湯木」を開業。昨年9月に大丸心斎橋店に出店。現在、大阪で4店舗を経営する。
編集後記
過去の過ちと向き合い、おもてなしの神髄を模索し続ける日本料理・湯木店主の湯木尚二さんに不屈の歩みを伺いました。
![](https://www.chichi.co.jp/htdocs/wp-content/uploads/2020/11/202012_yuki_pdf.jpg)
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