小学一年生の学習が人生のレベルを決める 陰山英男(陰山ラボ代表) 齋藤 孝(明治大学教授)

小学校一年生の時に言葉というものが好きになれば、国語について一生苦労することがない―。長年日本語教育に携わってきた明治大学教授・齋藤孝氏のそんな思いから一冊の本が生まれた。『齋藤孝のこくご教科書 小学一年生』である。小学生に与えるには、どのような国語の題材が理想なのか。音読などを取り入れた陰山メソッドで知られる陰山英男氏とともに、現代の教育の問題点や幼少期に国語教育が果たす役割、文化遺産としての日本語の価値などを交えつつ、語り合っていただいた。

当たり前のことにいま頃気づいたのですが、勉強嫌いがいつ生まれるかといったら一年生の時なんですね

陰山英男
陰山ラボ代表

 これまでいろいろな子を見ていて感じるのは、1年生から2年生までは学力は結構上がったり下がったりするんです。しかし、3年生である程度のレベルに到達すると、6年生までほぼ順位が変わらない。そう考えると、1年生の段階で学力を一定レベルまで高めておけば、3、4年生で躓くことが少なくなります。
 僕は、小学一年生の学習が、人生のレベルを決めると思います。音読をやって計算が速くなるとか、「百ます計算」を続けて社会科の点数が上がる、ということは日常的に経験することです。

子供のうちから力のある文章を読ませる基礎トレーニングはとても大事だと思います。文章の力強さが学力や逞しいメンタルを育てる上で大きな働きをすることは間違いないでしょう

齋藤孝
明治大学教授

 小学生には『論語』の「己の欲せざる所、人に施す勿れ」という章句が人気が高いと聞いたこともありますが、古典はそれだけ心の琴線に触れる力があるからこそ、今日まで残ってきたと思うんです。学習には、そういう「文化遺産を継承する」というような絶対的な意味合いが必要なのではないでしょうか。
 理科の教科書にニュートンの法則が出てきますが、これは絶対的ですよね。国語でいえば『万葉集』であり『百人一首』です。こういう取り替え不能な題材でラインナップを組むことが教科書の質であり核となります。
 その意味では、いまの国語の教科書の題材は取り替えがきくものばかり、という印象は拭えませんね。それを教える教師も文化遺産を継承する使命感がないまま教壇に立つなどありえないと私は思っています。

プロフィール

陰山英男

かげやま・ひでお――昭和33年兵庫県生まれ。55年岡山大学法学部卒業。城崎郡内の小学校を経て平成元年より兵庫県朝来町立山口小学校教諭。公募により15年広島県尾道市立土堂小学校の校長に就任。18年京都市の立命館小学校副校長就任。現在は陰山ラボ代表。教育クリエイターとして全国各地で学力向上アドバイザーを務める。著書に『陰山メソッド徹底反復「音読プリント」』(小学館)『陰山英男の読書が好きになる名作』(講談社)など多数。

齋藤 孝

さいとう・たかし――昭和35年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『子どもと声に出して読みたい「実語教」』『親子で読もう「実語教」』『子どもと声に出して読みたい「童子教」』『楽しみながら1分で脳を鍛える速音読』など多数。最新刊に『齋藤孝のこくご教科書 小学一年生』(いずれも致知出版社)。


編集後記

明治大学教授の齋藤孝さんが出版された『齋藤孝のこくご教科書 小学一年生』が反響を呼んでいます。どのような素材を提供すれば子供たちの学力や心は育まれるのか。教育界で克服しなくてはいけない問題とは何なのか。陰山ラボ代表の陰山英男さんとともに語り合っていただきました。

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