勝敗を決するもの 岩出雅之(帝京大学ラグビー部監督) 西谷浩一(大阪桐蔭高等学校硬式野球部監督)

毎年選手が入れ替わる中で、常に現状の戦力から出発し、選手を育てチームを日本一へと導く。その歩みはまさしく看脚下といえるだろう。片やラグビー全国大学選手権で前人未到の九連覇を果たした帝京大学ラグビー部。片や史上初となる2度目の甲子園春夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭高等学校硬式野球部。全国屈指の強豪校が鎬を削る世界において、ひと際輝かしい実績を積み重ねてきた岩出雅之氏と西谷浩一氏が語り合う指導論の極意とは――。

言い訳をしなくて済むような徹底した準備や努力を積み重ねていかなきゃいけない

岩出雅之
帝京大学ラグビー部監督

西谷 
全国大学選手権九連覇、関東大学対抗戦八連覇というのはどちらも前人未到の記録だとお聞きしていますけど、勝ち続けてきた理由は何だとお考えですか?

岩出 
一回だけ優勝させるのは、その年のメンバーに恵まれていれば可能だと思うんですけど、それでは連覇は難しい。

西谷 
毎年選手が入れ替わりますからね。

岩出 
ええ。ですから、大切なのはいかに「チームカルチャー」を築いて、選手層を厚くしていくかだと思います。

西谷 
チームの文化、ですか。

岩出 
選手たちが自分を信頼するといいますか、自信を積み重ねていくのはそう簡単なことではありません。やっぱり自信や心の余裕がない状態では、どれだけフィジカルやスキルを持っていても試合で力を発揮できないんですね。
 毎年毎年、先輩たちからたくさんのサポートを受けつつ、自信のもとになる心の余裕、体の余裕、プレーの余裕を一~二年生は学ぶ。先輩から後輩へ経験値や考え方を伝承し、共有する。そういう文化を心掛けてつくってきました。
 ラグビーの伝統校といえば早慶明で、我われはその伝統校に追いつけ、追い越せと思ってやってきたんです。練習にしろ試合にしろ、一つひとつのプロセスで全力を尽くすことで、徐々に伝統校を相手に互角の勝負に持ち込めるようになり、その壁を越えて勝利を得ることができるようになりました。
 だから、僕は何連覇という数字にはあまり拘ってなくて、一つひとつの試合で、自分たちがやってきたことの成果を実感できるほうが大切だと思っています。

チームを強くしようと思ったらまず個人をどれだけ鍛えていくかが大事だと思います

西谷浩一
大阪桐蔭高等学校硬式野球部監督

岩出 
西谷監督は昨年、史上初となる2度目の春夏連覇を果たされたわけですが、勝因をどのように捉えていますか?

西谷 
甲子園大会100年の歴史の中で春夏連覇した学校は7校あり、本校が7校目に当たります。その春夏連覇を2度にわたって達成したのは私たちが初めてです。いま振り返ると、昨年の春夏連覇はその前年の敗戦が大きな転機になったと思います。
 実は一昨年も春のセンバツに優勝し、連覇がかかっていたものの、夏の甲子園3回戦で残酷的な負け方をしましてね。1対0で9回裏ツーアウトまで勝っていて、直後の打者にヒットを打たれて、逆転サヨナラ負けを喫しました。

岩出 
それは無念やる方ない敗戦でしたね。

西谷 
しかし、そういう苦杯を嘗めたことで、新チームのキャプテンとなった中川やエースの柿木、また主力の根尾(昴)や藤原(恭大)らを中心に、チームが一丸となったように思います。彼らは自分たちのあり方を見つめ直し、「春優勝するだけでも夏優勝するだけでもダメ。必ず春夏連覇するんだ」と自らにプレッシャーをかけ、「練習以外の日常生活も含め、すべてのことを日本一の物差しで測ろう」と言って努力を積み重ねました。
 その結果、2度目の春夏連覇を果たすと共に、昨年1度も試合に負けなかったんです。まさに敗戦をバネに立ち上がり、強く逞しく成長していきました。

岩出 
素晴らしい実績です。今回は確か大阪桐蔭から4名もプロに入団したんですよね。

西谷 
はい。4名というのは歴代最多タイらしいんですけど、彼らにとってはすべてが勉強ですから、それぞれのチームで着実に一歩ずつ前進してほしいと願っています。

プロフィール

岩出雅之

いわで・まさゆき 昭和33年和歌山県生まれ。和歌山県立新宮高等学校を経て、55年日本体育大学体育学部卒業。滋賀県の教育委員会、中学校、高校勤務を経て、平成元年滋賀県立八幡工業高等学校へ赴任。8年帝京大学ラグビー部監督に就任。22年創部40周年にして初の全国大学選手権優勝。以来、同選手権では優勝を続け、史上初の9連覇を果たした(30年まで)。著書に『常勝集団のプリンシプル』(日経BP社)など。

西谷浩一

にしたに・こういち 昭和44年兵庫県生まれ。報徳学園高等学校、関西大学で野球をプレー。平成5年同大学経済学部卒業後、大阪桐蔭高等学校に赴任し、硬式野球部のコーチとなる。10年11月から監督に就任。13年にコーチに戻ったが、14年秋に監督復帰。これまで甲子園優勝7回(春3、夏4)を経験し、監督として歴代最多。中村剛也、中田翔、藤浪晋太郎、根尾昂、藤原恭大ら、幾多の逸材をプロに輩出している。


編集後記

ラグビーの大学選手権で30年近く破られなかった3連覇の記録を塗り替え、帝京大学を9連覇に導いた岩出雅之さん。まだ49歳の若さながら、高校野球の監督として歴代最多の甲子園優勝7回を誇る大阪桐蔭高校の西谷浩一さん。お二人が語る指導哲学は、人材育成や組織マネジメントに悩む方々に多くの示唆を与えるでしょう。

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