この生をいかに全うするか 伊藤唯眞(浄土宗総本山知恩院門跡 浄土門主) 奥野滋子(緩和ケア医)

人生100年時代といわれる。しかし、その行き着く先にある死の問題については、多くの人が平素あまり深く考えることをしない。人の死が身近にあった中世に生まれた、浄土宗の法統を継ぐ伊藤唯眞氏と、緩和ケア医として2500人もの死と向き合ってきた奥野滋子氏の対話を通じて、限りある生を全うし、日々丹誠を込めて生きるための心構えについて考えた。

生かされていることを感謝して

伊藤唯眞
浄土宗総本山知恩院門跡 浄土門主

阿弥陀様によって救われるというのは、大自然の中に生かされていると言い換えると、一般の方にも理解しやすいでしょう。そういう自覚を持つところから感謝の心が生まれます。自分は一人で生きているのではない。自分を超える大きな力、たくさんの力によって支えられていることを自覚しながら、日々丹誠を込めて生きることが大切です。

患者さんは闘病の中で気づきを得て、自分の物語を書き換えて成長していかれます

奥野滋子
緩和ケア医

どれだけ死にたくないと思っても、やっぱり死は避けられない。だったら、いまをどう生きるか、何のために生きるのかをしっかり考えて毎日丁寧に生活していく。

プロフィール

伊藤唯眞

いとう・ゆいしん―—昭和6年滋賀県生まれ。28年佛教大学卒業。33年同志社大学大学院文学研究科博士課程修了。49年佛教大学文学部教授。平成元年同大学学長。9年京都文教短期大学長。11年京都文教学園学園長(兼任)。平成19年大本山清浄華院法主。22年浄土門主・総本山知恩院第88世門跡。著書に『伊藤唯眞著作集』『日本人と民俗信仰』(ともに法蔵館)『法然上人の言葉』(淡交社)など。

奥野滋子

おくの・しげこ——昭和35年富山県生まれ。金沢医科大学卒業。順天堂大学医学部麻酔科学講座で麻酔・痛み治療に従事。平成12年より緩和ケア医に転向。神奈川県立がんセンター、順天堂医院緩和ケアセンターを経て、現在湘南中央病院在宅診療科医長。著書に『ひとりで死ぬのだって大丈夫』(朝日新聞出版)『「お迎え」されて人は逝く』(ポプラ社)『今日も、「いのちの小さな奇跡」を見つめて。』(大和出版)など。


編集後記

『致知』の対談で一年ぶりの対面を果たされたという、浄土宗総本山知恩院門跡の伊藤唯眞さんと緩和ケア医の奥野滋子さん。宗教者と医療者という立場を超え、生と死にまつわる様々な問題について率直に語り合っていただきました。生ある者、必ず死あり。その自覚が、充実した人生の出発点であることを教えられました。

2018年10月1日 発行/ 11 月号

特集 自己を丹誠する

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