恩返しより恩送りの生き方を 明石定子(東京女子医科大学乳腺外科教授・基幹分野長)

年々国内での罹患数が増加している乳がん。罹患数は年間約9万人を超え、女性が罹患するがんでトップになっています。東京女子医科大学の明石定子教授は乳腺外科のプロフェッショナルと呼ばれ、その腕を頼って病院に訪れる人が後を経ちません。〝神の手〟とも称される明石先生の技術はいかにして培われたのか。医師としての歩み、多くの患者さんの命と心に寄り添い続ける中で掴んだ、よりよい人生を生きるために大事なことを伺いました。

乳房は女性の象徴だからこそ、たとえ命が助かっても、心に大きな傷を負ってしまうかもしれない。

患者さんの命のみならず、心まで寄り添うことが、乳腺外科医としての責務なのだと思い至りました

明石定子
東京女子医科大学乳腺外科教授・基幹分野長

──明石先生は乳腺外科医のフロントランナーとして多くの手術を手掛けてこられたそうですね。

〈明石〉
乳腺外科一筋に歩み、早30余年です。これまで約3,000件の乳がん手術を執刀してきました。

元来日本における乳がんの罹患率は欧米に比べて少ないとされてきましたが、昨今は食生活の欧米化・未産などが要因となり罹患数は著しく増加しています。いまや女性が罹患するがんでは最も多い年間約9万人、実に9人に1人が乳がんを患っている計算です。

さらに、私が理事を務める日本乳癌学会の会員数は漸減しています。特に若手医師の数は伸び悩んでおり、良質な医療の提供が困難となりつつあります。こうした現状を踏まえ、ここ数年は後進の育成に力を注いできました。

──具体的にどのようなことに取り組まれていますか。

〈明石〉
当科は乳腺専門医の取得は当然ながら、学会発表や論文指導、学位の取得まで責任を持って指導することをモットーに掲げています。医学生の実習では早くから手術に立ち会ってもらい、現場に触れる教育を大切にしてきました。

また、……(続きは本誌にて)

~本記事の内容~
▼ただ治すのではなくよりよく治す
▼「一つの仕事を始めたなら諦めず続けろ」
▼一人ひとりの命と心に寄り添い続ける
▼子育てから学んだよりよい人生を生きる秘訣

プロフィール

明石定子

あかし・さだこ――昭和40年兵庫県生まれ。平成2年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院第三外科に入局。4年国立がん研究センター中央病院外科レジデントとして研鑽を積む。23年昭和大学医学部乳腺外科准教授に就任。令和4年より現職。現在は日本乳癌学会理事を兼任。


編集後記

終始笑顔と穏やかな口調で質問に答えてくださる姿から、人を包み込むやさしさが溢れ出ていました。まさに、多くの人々の命と心に寄り添ってきた明石先生だからこそ纏える温もりがヒシヒシと伝わってきました。

2024年8月1日 発行/ 9 月号

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