9 月号ピックアップ記事 /インタビュー
「継続は力なり」書のさらなる高みを目指して 井茂圭洞(書家)
日本を代表する書家の一人である井茂圭洞氏は、米寿を迎えるいまも日々創作に余念がない。長年、伝統的な書の美しさに現代的な独自の美的感覚を備えた書法の探究を続けつつも、「自分で納得できた作品は、いまもってほとんどない」と語る。限りなき道を前進し続ける井茂氏に、書に懸ける思いをお聞きした。
月並みかもしれませんが「継続は力なり」という言葉をとても大切にしています。
自分の才能に照らして自分の求めている書は、いくつになってもあまりにも遠い。
そこに一歩でも二歩でも近づきたいという思いから、この言葉を日々、自分に言い聞かせているんです
井茂圭洞
書家
井茂氏の書=「しき島の大和ごゝろを人とはヾ朝日に匂ふ山桜花」(大和心/本居宣長)
――井茂先生は、九月に米寿を迎えられるいまも日々、書の創作に勤(いそ)しまれていますね。
〈井茂〉
自分ではまだまだ若いと思っていたのに、いつの間にか米寿を迎えようとしているというのが本音です。脚力も随分低下しました。
ただ、これはどの分野でも同じだと思いますが、生涯妥協しない、妥協できないのが作家精神だと思っているんです。
書というものは終わりのない仕事です。これが何か数字を追うようなものであれば、あるところまで目標は達成したという感覚になるのでしょうが、終わりのない仕事をしている以上、いわゆる達成感を得ることはありませんね。またそれがこの道の魅力でもあるのでしょうけれども。
――いまはどのような毎日を?
〈井茂〉
若い頃と比べて仕事量は5分の1くらいになりましたが、それでも食事をする時、睡眠を取る時、かつては車を運転していた時を除いて、いつも私の頭の中は自身の課題のことでいっぱいです。
常に課題を持って臨むからこそ、いざ書に向かう時にもスッと気持ちが一つになる。課題も持たないまま「さあ、いまから書こうか」と筆を執(と)るようではとても大成できません。
……(続きは本誌をご覧ください)
~本記事の内容~
▼従来のカテゴリーに収まらない書を求めて
▼ファイトではなく根性でなくてはいけない
▼基礎があってこそ、その人の個性が生まれる
▼「眼」を捉えられてこそ、その道のプロ
プロフィール
井茂圭洞
いしげ・けいどう――昭和11年兵庫県生まれ。京都学芸大学(現・京都教育大学)卒業後、私立芦屋女子高等学校、京都教育大学で教鞭を執りながら、書家として活躍。52年、54年には日展で特選受賞、平成13年日展内閣総理大臣賞受賞。現在、日本芸術院会員、日展顧問、一東書道会会長、京都教育大学名誉教授、読売書法会最高顧問などを務める。令和5年文化勲章受章。著書に『井茂圭洞 かなの美韻 白梅帖』(美術新聞社)など。
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