与えられた運命を生かす──95歳の名女将が語る〝不可能を可能に変えてきた道のり〟 佐藤幸子(かみのやま温泉 古窯 大女将)

創業73年、山形かみのやま温泉を代表する「日本の宿 古窯」。こだわり抜いた地元の食材を生かした郷土料理、名峰・蔵王連峰を一望できる天空露天風呂、心を込めたおもてなしなどが評価され、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」にて、40年以上連続でトップ10を受賞している。
しかし、かつてはお金も水も電話もない、徒手空拳からの出発だったという。幾多の苦労を乗り越え、不可能を可能に変えてきた創業者の佐藤幸子さんに、これまでの歩みと共に、古窯73年の歴史を貫いてきた精神について伺った。

「与えられた運命を生かす」

愚痴や文句や批判を言わず、辛い時も苦しい時もその境遇を受け入れて、一所懸命やっていれば、必ず助けてくださる人との出逢いに恵まれ、よりよい方向へと発展していく。

不可能はないと思います

佐藤幸子
かみのやま温泉 古窯 大女将

――実に若々しく、とても95歳には見えません。

〈佐藤〉
まぁ本当にありがとうございます。ようこそお出でいただきました。

――大女将とお呼びすればいいですか?

〈佐藤〉 
ええ。よろしいですけど、大女将って言うと狼みたいで皆が怖いって(笑)。副会長という肩書も一応ついています。

――それにしてもお元気ですね。健康長寿の秘訣は何でしょうか?

〈佐藤〉
規則正しく朝は6時に起きて夜は11時に寝ます。それから煙草も吸わないし、お酒も飲みません。私は趣味がいっぱいありましてね。俳句だったり歌だったり、そして物書き。これまで計10冊のエッセイを出版してもらいましたし、大切な方には何かあるとすぐハガキを書いて出すの。

きょうの取材もいただいた質問項目を全部お答えできるように、このように箇条書きでしたためてきました。まるで生徒が試験勉強をするかのように(笑)。

――素晴らしい。この丹誠を込めた準備万端さが古窯70年の歴史を支えたのでしょうね。

〈佐藤〉
そうかもしれません。とにかく何にもないから、考えないではいられなかった。自分でつくるより他に仕方なかった。

……(続きは本誌をご覧ください)

~本記事の内容~
◇老いて輝く人と老いて衰える人の差
◇からっぽの金庫からすべては始まった
◇「すべて人のせいにしない」義母の教えを実践して
◇熱意と創意工夫で道なき道を切り拓く
◇扇谷正造から学んだ仕事の極意
◇ある大工の棟梁との忘れ得ぬ出逢い
◇苦しい時こそ前向きに考える
◇最大の試練を乗り越えた逆転の発想
◇「為せば成る」を大切な信条に

本記事では全7ページ(約10,000字)にわたって、佐藤幸子さんのインタビューを掲載しています。

プロフィール

佐藤幸子

さとう・さちこ――昭和4年山形県生まれ。県立米沢高等女学校卒業。26年義母から300坪の温泉つきの土地とからっぽの金庫をもらい、山形県上山市に7部屋の旅館を開業。持ち前の前向きさで創意工夫を重ね、業容を拡大すると共に、名だたる著名人が通う旅館に育て上げる。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」では、現在に至るまで40年以上連続でトップ10を受賞。52年東京・銀座に和食店「日本料理 古窯」を開店(令和2年閉店)。平成4年のNHK連続テレビ小説「おんなは度胸」(橋田壽賀子・作)のモデル。著書に『からっぽの金庫から』(ミリオン書房)『縁』(書肆犀)など。


編集後記

志ネットワーク「青年塾」代表の上甲 晃さんから「ぜひ紹介したい方がいる」とお繋ぎいただいたのが、山形県の老舗温泉旅館「古窯」創業者で大女将の佐藤幸子さんです。7月3日(水)、東京駅から新幹線で約2時間半、かみのやま温泉駅から車で約5分、古窯を訪ねました。佐藤さんと対面して、95歳とは全く思えない若さ、心のこもったおもてなし、そして何と3時間近くも語り続けるバイタリティーに驚きと感動を禁じ得ませんでした。

2024年8月1日 発行/ 9 月号

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