貫くものをもって努力を続ければ、苦難は必ず人生の糧になる 石田和雄(将棋棋士九段)

長くトップ棋士として活躍すると共に、千葉県柏市で将棋センター・子供将棋教室を運営し、多くのプロ棋士を育ててきた将棋界の名伯楽・石田和雄氏、77歳。現在に至る道のりは逆境の連続だったという石田氏に、人生の山坂の中から掴み取った人育ての要諦、自らの運命をひらいていく心の持ち方を語っていただいた。

「幸運は不運の姿をしてやってくる」という言葉がありますけれども、貫くものを持って諦めずにやり続ければ、一見不運と思われた出来事も自分の人生をよりよいものにしてくれる幸運だったことに後から気づくんです

石田和雄
将棋棋士九段

――石田さんが経営する柏将棋センター(千葉県)の子供将棋教室は、藤井聡太氏(当時四段)の連勝記録を止めた佐々木勇気八段をはじめ、高見泰地七段、勝又清和七段など何人もの棋士を輩出されています。普段、どのようなことを心掛けて指導されているのですか。

〈石田〉
この前もメディアの取材が来ましたけれども、たくさんの子供たちが切磋琢磨し真剣に将棋を指している姿を見て、皆さん本当にびっくりされます。

私自身は特別な指導をしているつもりはないのですが、教える時には「これまで自分が培ってきたものを全部あげよう」という気持ちで子供たちに真剣に向き合ってきました。

また最初はその子がうまく勝てるよう誘導してあげて、基本といいますか、将棋の本筋はこういうものだってことをしっかり教えるんです。

――まず将棋の本筋、基本をしっかり身につけさせるのですね。

〈石田〉
ええ、やはり本筋を覚えないことにはどうにもなりません。しかし、どこで見たのか、「この手はだめだ」と教えたことをやってくる子が時々いて困るんですよ。

そんな時には、まあ、やってみなさいと言って、その手を実際に盤上で潰つぶして見せるんです。すると、その子もだめな理由を理解して自然にやらなくなっていきます。

……(続きは本誌をご覧ください)

~本記事の内容~
◇決して驕らず謙虚に努力し続ける
◇苦労は逃げると追っかけて来る
◇自ら吸収したものだけが本当の身になっていく
◇「盤上没我」で盤上の真理を追究せよ
◇流れに抵抗せずありのままに受け入れる
◇幸運は不運の姿をしてやってくる

プロフィール

石田和雄

いしだ・かずお――昭和22年愛知県生まれ。42年プロ棋士としてデビュー。以後トップ棋士として長く活躍し、平成24年に現役引退。また、解説者としても高い人気を得、現役時代から千葉県柏市で将棋センターを経営。特に子供たちの育成に力を注ぎ、藤井聡太氏の連勝記録を止めた佐々木勇気八段や高見泰地七段など、多くのプロ棋士を育ててきた。著書に『棋士という生き方』(イースト新書)などがある。


2024年8月1日 発行/ 9 月号

特集 貫くものを

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