9 月号ピックアップ記事 /インタビュー
おとうふの可能性をどこまでも切り開いていく 鳥越淳司(相模屋食料社長)

先代から経営のバトンを継いだとうふメーカーで、業界で初めて年商100億円を突破し、直近で年商410億円という破格の業績を実現した鳥越淳司氏。とうふの概念を破る画期的な新商品の開発や、破綻した同業者の救済など、同社に大きな飛躍をもたらしてきた施策と共に、鳥越氏が貫いてきた思いに迫った。

夢は見るものではなく、叶えるもの
鳥越淳司
相模屋食料社長
(写真=鳥越氏の純粋な思いに基づいて開発された「ザクとうふ」は、発売2か月余りで販売数100万個を超える大ヒット商品になった)
――鳥越社長は2007年に33歳の若さで相模屋食料の社長にご就任後、同社を短期間のうちにとうふ業界のトップへと導いてこられましたね。
〈鳥越〉
私どもの業界では昔から、「とうふ屋と出来物は大きくなると潰れる」と言われてきましてね。町のおとうふ屋さんが評判になって工場をつくったりしても、家族経営からうまく脱皮できなくて、だいたい年商80億円を超えるとダメになるというのが相場だったんです。
当社も1951年に群馬県で創業された時は、町の小さなおとうふ屋で、私が入社した2002年の年商は28億円でした。けれどもおかげさまで、2009年度には業界で初めて100億円を突破し、昨年度は410億円を計上することができました。業界2位の会社の年商が161億円ですから、その2.5倍強なんです。
――まさしく急成長の立役者と言えますが、もともとは別の業界にいらしたそうですね。
私は大学を出て雪印乳業に入社し、営業マンとして群馬県に赴任していました。お得意先のスーパーで相模屋食料先代社長の三女だった妻と出逢い、結婚する時に「社長をやってくれないか」と言われて当社に入ったんです。ですからそれまでは、おとうふの知識も経営の経験も全くありませんでした。
――営業マンから経営者へ。迷いはありませんでしたか。
迷いよりも、やってみたいという気持ちのほうが強かったですね。サラリーマン家庭に育ちましたから経営の世界には全く縁がありませんでしたが、会社の批判ばかりしていた私に「だったら自分でやればいい」と言われたことをきっかけに興味を抱いたんです。やり方なんか分かりませんでしたけど、やってみれば何とかなるだろうと(笑)。
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~本記事の内容~
■とうふ業界で異例の業績を実現
■こんな仕事の仕方は二度としてはならない
■苦境のとうふメーカーに手を差し伸べて
■斬新な商品開発でとうふの世界を広げる
■リスクがついてこられないスピードで進め
■逆境になるほど強くなる
■夢は見るものではなく叶えるもの
プロフィール
鳥越淳司
とりごえ・じゅんじ――昭和48年京都府生まれ。早稲田大学商学部卒業。平成8年雪印乳業入社。14年相模屋食料入社。19年同社社長に就任。斬新な商品開発と地方とうふメーカーの救済M&Aで業界トップに牽引。
編集後記
業界異例の快進撃を続ける鳥越さんが明かす人生と経営の妙諦。苦境にある企業、社員が犯しがちな過ち、盲点に気づかされる取材でした。何より、前職での悔恨を胸に現場を歩き回りながら、それでいて会社と業界の前例に囚われない仕事に取り組む姿勢に啓発されました。

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