8 月号ピックアップ記事 /対談
鈴木大拙の求めた世界 竹村牧男(東洋大学前学長) 横田南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
鈴木大拙の愛弟子である秋月龍珉の薫陶を受け、仏教学一筋に歩んできた竹村牧男氏。若き日の鈴木大拙が参禅し、人格を練り上げた円覚寺の管長を務める横田南嶺氏。共に鈴木大拙に私淑するお二人は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する未曽有の時代のいまこそ、鈴木大拙の思想に拠って立つべきと口を揃える。鈴木大拙が求めた世界とはいかなるものか。そこから見えてくる私たちの生き方、考え方とは――。
他者のために祈りの気持ちを発揮することが大切です
竹村牧男
東洋大学前学長
この未曽有の時代をどう生きるか、大拙先生の生き方や思想から学ぶ上で、キーワードになるのは「祈り」だと感じています。真宗だと、「祈りはけしからん」みたいなことを言う場合もありますが、大拙先生は意外と祈りについて言及されているのです。
誰かが苦しんでいる状況を見た時に、何とかしなきゃならないという気持ちが自ずから湧いてくるではないかと。それが祈りであって、そういう已むに已まれぬ思いが慈悲の心だと思います。
大拙先生が現代に生きておられたら、きっと「何とか新型コロナウイルスの感染が終息するように」と祈らずにはいられないのではないかと思います。
我われはもっと謙虚にならなければいけないと思います
横田南嶺
臨済宗円覚寺派管長
特に現代人は祈りを失ってきて、私自身も、やはりこういう現状にあると、気になるのはやっぱり情報なんですね。きょうはどこで何人が感染したのか、どうしたら予防できるのか。ついついそちらばかりを気にするんですけれども、しかし、人類はこういうことが起こるたびに祈ってきました。
いま、直接会うことができないから、商談や会議でも学校の授業や飲み会でも、じゃあオンラインだっていうことに走るんでしょうけれども、私は人と人とが共鳴し合えるのが祈りだと思うんですよ。一つのことを祈ることによって、別にオンラインを使わなくても、離れたところであっても、その祈りは通じ合う。そういう気持ちが大悲の心、他に対する思いやりに通ずるわけですから、我われはもっと謙虚にならなければいけないと思います。
プロフィール
竹村牧男
たけむら・まきお――昭和23年東京都生まれ。東京大学卒業後、文化庁専門職員、三重大学助教授、筑波大学教授、東洋大学教授を経て、平成21年より東洋大学学長。令和2年3月退任。専攻は仏教学・宗教哲学。主な著書に『〈宗教〉の核心─西田幾多郎と鈴木大拙に学ぶ』(春秋社)『西田幾多郎と鈴木大拙?その魂の交流に聴く』(大東出版社)『日本人のこころの言葉 鈴木大拙』(創元社)など。
横田南嶺
よこた・なんれい――昭和39年和歌山県生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『人生を照らす禅の言葉』『禅が教える人生の大道』『自分を創る禅の教え』など多数。最新刊に五木寛之氏との共著『命ある限り歩き続ける』(いずれも致知出版社)。
編集後記
特集を締め括るのは、鈴木大拙の思想に精通する東洋大学前学長の竹村牧男さんと臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺さんの対談です。横田さんが修行時代を過ごした白山道場・龍雲院にて取材は行われました。大拙が「仏教の最高峰は華厳思想」と語ったその華厳思想についても、平易明快に繙かれています。読むほどに、大拙が追究した深奥な世界に惹き込まれていくでしょう。
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